【チャイナ網路】“月桃”生活


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 梅雨のころに花をつける月桃は、台湾南部や山間部でもよく見かける植物だ。この時期、話題に上るのが、端午の節句のチマキ談議。包む葉は竹がメジャーだが、台湾南部出身者や客家の人たちには「月桃じゃないと」とこだわる向きも少なくない。
 もち米を豚肉や田芋、しいたけ、干しエビなどといため合わせて、月桃の葉で包む。葉をゆで始めるや、部屋中に香気がたちこめ、子供たちは胸躍らせるのだという。
 月桃は実に無駄がない。葉を乾燥させれば、先住民が作るござやかごの材料になり、その繊維は強靭(きょうじん)な綱にもなる。
 事実、蘇澳では1950年代まで、月桃でイカリ綱を綯(な)っていた。アルカリ性の綱は海水にも強い。斜面に月桃を植え、土砂の流失を防ぐというのも、古人の知恵だった。
 嫁入り後、初の帰省の「帰寧」の日、婿殿には必ず「月桃鮮魚」が振る舞われていた。
 「月桃のように美しいわが娘を、大切にしてほしい」。そういう両親の思いだという。
 決して目立つわけではないが、月桃は強くてやさしい花なのだ。
 (渡辺ゆきこ、本紙嘱託・沖縄大学助教授)