【チャイナ網路】帰郷講演から見えたもの


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 李敖(70)が先月、56年ぶりに中国の土を踏んだ。著書100冊を超える歴史学者で作家だが、ほとんどが発禁になったという人物。果たして中国での連続講演を無事終えられるのか、マスコミの注目が集まった。
 戒厳令下、独立派と目され獄につながれるも、舌鋒鋭く国民党政府を追及。反体制派のヒーローとなる。政権交代後は、一転して民進党政府を批判。「台湾は中国のキンタマだ。アメリカにつかまれているが、たたくにたたけない」と、権力批判を続けている。快刀乱麻を断つ下ネタ評論に、ファンは少なくない。
 北京大学での講演では、最高学府を「腰抜け」と批判し、中国政府に言論の自由を求めて、満場の拍手を得た。が、次の講演で論調はトーンダウン。3回目はさらに鈍った。中国政府が“強い関心”を示したためと、マスコミの憶測は飛ぶ。
 真相はどうであれ、氏に講演を許した中国政府の姿勢は評価できる。もっとも、講演に以前の輝きはなかった。自由主義の戦士も老いて守りに入ったか、時代が彼を追い越したのか。中国政府が“関心”を示すほどの内容だったかにも、疑問は残る。
(渡辺ゆきこ、本紙嘱託・沖縄大学助教授)