【交差点】バス爆破事件


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 福州市の繁華街で8月上旬、路線バスが爆発炎上した。周辺道路が封鎖され、死者1人、重軽傷者30人以上を出す惨事で、現場付近は一時騒然となった。この事件は現地福州でリアルタイムで報道され、第一報を聞いたときは英国に続き、まさか中国でも? とテロの可能性を懸念した。
 しかしその後の調べで、世界各地で頻繁に起きている思想的動機のテロではなく、病魔によって余命いくらもない男性の自家製爆弾による、いわば心中的な爆破事件と判明した。
 恥ずかしながら今まで、テレビ等で報道されるテロ被害のほとんどを、遠い外国で起きた悲惨な事件程度の認識でとらえていた私は、今回自宅から約500メートル、しかも頻繁に訪れる地域で起こった爆破事件により、日本(沖縄)に住んでいたときにはほとんど感じなかった「危険に対する恐怖」というものを強く感じた。
 インターネットが普及して久しい現在、簡単に世界中のいろいろな情報を得ることが可能になった。各地で起きているさまざまな残忍な殺人事件、無差別なテロ爆破事件等、凶悪犯罪のニュースを目にすることも珍しくない。
 現実に起きている事件に対しどこか鈍感に、また無関心になっていた直後に起きた今回の爆破事件は、生身に起きる事件事故の恐怖を再認識させた。
 (吉元耕己・中国沖縄民間大使)