【チャイナ網路】「台客」


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 アイドル写真の泥よけを翻し、がに股でスクーターにまたがる茶髪に、くわえたばこのアンチャン風。台湾の田舎町ならどこでも見掛ける“ダサヤバさ”の権化のような風体だが、今これが「台客」の名で注目されている。
 「台客」の解釈や定義に、定説はまだない。語源は、戦後外省人が本省人を指して言った蔑称(べっしょう)とする説が有力だが、今や両者の新世代にとって、わだかまりも過去の話だ。新たに現れた「中国」という他者に、「台湾人」としてくくられた彼らは、共通の「台湾人らしさ」を「台客」と名付けて、模索し始めたとも読める。
 米国にあこがれ、日本を模倣してきた台湾の戦後世代。ふと立ち止まり、自らのオリジナリティーを問い直したとき、意外にも見えてきたのは、“ダサい”と決めつけていた、ありのままの自分だった。
 音楽やファッションに浸透し、若者文化の大きな選択肢の一つとなりつつある「台客」文化。パンクやヒップホップが生まれた時のように、批判の声は少なくない。が、それもどこ吹く風と、彼らは軽々とタブーを越えてみせている。
(渡辺ゆきこ、本紙嘱託・沖縄大学助教授)