【交差点】悲しき外国人労働者たち


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 シンガポールでは2種類の外国人たちが働いている。1つのグループはシンガポールが国の発展のために必要と考え、厚待遇で金融やIT分野を中心とし活躍するホワイトカラーの外国人たち。もう1つのグループは、シンガポール人が興味を示さない職種のメードや工事現場で働くため他のアジアからきた労働者たちである。
 ホワイトカラーは主に欧米から来ており、メードはフィリピン、インドネシア、スリランカ、工事現場の労働者はタイ、インド、パキスタンからが中心だ。当然ながらホワイトカラーの欧米人は会社の管理職で、シンガポール人を指導する立場にある場合が多く、平均的シンガポール人より高給取りでいい暮らしをしている。
 他のアジアから来ている労働者たちは低給与の上、家族への仕送りの必要性もあり、非常につつましく暮らさなくてはいけない。この構図は、支配者である白人、能力があり地元民を管理する中間職であった華僑というような植民地時代の階層を思い出させる。
 先日、デパートで主人のシンガポール人に大声で怒鳴られ、大泣きしている若いインドネシア人のメードを見掛けた。「今度、こういうことをしたら、国に送り返すわよ!」「申し訳ありません。もう2度といたしません」。シンガポール人の怒鳴り声が耳に響き、メードの泣き声が心に響いた。
 まさに主人と使用人。さながら植民地時代にタイムスリップしたような錯覚にとらわれた。
 (遠山光一郎・シンガポール現地法人社長)