【沖縄】約600年の歴史を持つ沖縄市越来のウスデーク(臼太鼓)が9月29日、区内であり、地域の末長い繁栄を厳かに奉納祈願した。コロナ禍のため4年ぶりの通常開催で、越来小5年生の児童40人余が初めて集団見学した。
地域にある越来グスクは有名な「万国津梁之鐘」を鋳造した琉球王朝第一尚氏第6代の王、尚泰久が長年王子として過ごした場所だ。その際、側室の世利休が男児を生んだのを祝い踊ったのがウスデークの始まりとされる。歴史が深く、同地域の子孫でつくる越来共有会(川畑弘隆会長)が伝統行事として継承し、旧暦の8月15日に執り行われている。
午前中は共有会役員らが10カ所の拝所で祈願し、その後世利休の母子を世話したとされる川畑家拝所に年長者数人が奉納を報告し、前庭でウスデークを演舞した。ウスデークは円陣舞踊で、今年は40~90代の25人が参加。衣装はさわやかな紺絣(がすり)に紫の頭巾。内側の太鼓打ちに合わせ、反時計回りにゆっくりリズムを刻む。
祝詞は首里王朝や越来領主をたたえ、地域の繁栄、その歓喜を込めた内容で1時間余もよどみなく唱えながら手踊りの所作、扇子や四つ竹を交互に演じ、荘重な雰囲気に包まれた。ウスデークはムラの祭祀(さいし)をつかさどる最高の神女をまつったとされるヌンドゥンチヤーの拝所でも奉納した。
93歳の最高齢で参加した新屋春子さんは「40年余も踊っている。心のよりどころです」と表情を和らげた。見学した越来小の伊佐太陽さんは「神々しくてとても感動した。残したい文化です」と興奮の面持ちで話した。
川畑会長は「共有会で取り仕切っていたが、今回初めて地域住民も参加してもらった。継承者が高齢化しているので、移住者や自治会との協力は欠かせない」と伝統行事継承に強い思いを込めていた。
(岸本健通信員)