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夜間中学で学びの機会を 那覇でシンポ 香川・三豊市長らが講演 公立校設置の意義を解説


夜間中学で学びの機会を 那覇でシンポ 香川・三豊市長らが講演 公立校設置の意義を解説 夜間中学の意義を話す山下昭史三豊市長(右から2人目)と、基礎教育保障研究所の城之内庸仁理事長(右端)=10月28日、那覇市の八汐荘屋良ホール
この記事を書いた人 Avatar photo 藤村 謙吾

 「那覇市立夜間中学校(学級)をつくろうシンポジウム」(同実行委員会主催)が10月28日、那覇市の八汐荘屋良ホールであった。香川県で初の夜間中学「三豊市立高瀬中夜間学級」を開設した三豊市の山下昭史市長と、三豊の夜間学級開設にも関わった、基礎教育保障研究所理事長で全国夜間中学校研究会理事の城之内庸仁氏が講演した。

 夜間中学は1955年の89校をピークに、60年代にかけて減少の一途をたどった。2016年12月に教育機会確保法が成立し、文科省が、夜間中学を全都道府県および政令指定都市に、少なくとも1校設置する方針を示した。夜間中学は23年10月現在、公立17都道府県44校にあるが、県内に公立の夜間中学はない。講演には約40人が参加し、学びを取り戻す機会を広く提供する、夜間中学の意義や展望を学んだ。

 城之内氏は、風邪で病院に行くのに、わざと手に包帯を巻く人の話を紹介。「病院では問診票を読んだり書いたりするが、その方は読み書きができないため、『今日は書けない』と言って受付の方にやってもらう。そういう苦しい状況にある方を支える、一つの方法として夜間中学がある」と話した。

 夜間中学に通う人には(1)未就学者(高齢者)(2)形式卒業者(いじめなどで不登校になり、学齢期に学校に通えなかった人)(3)外国籍や外国にルーツを持つ人がいると説明。その上で高瀬中夜間学級は22年に全国で初めて学齢期で不登校になっている生徒を受け入れていると紹介した。「夜間中学校はその時代、時代の映し鏡」と話し、今後外国籍の人や不登校の生徒の受け入れが進むとした。

 城之内氏は、読み書きができないことは「毎日が不安の連続」とし、「学ぶことが生きること」だと強調。高瀬中夜間学級に通う学齢期の生徒が、生き生きと日々を送る姿を紹介し「学べる場があれば、頑張れる。頑張りたかった子が、(自身の生を)生きていける」と力を込めた。

 後半のパネルディスカッションで山下市長は「教育に関し、コストの話を始めたら終わり。行政として腹をくくれるかが大事だ」と話し、「一人でもニーズがあればやる」という強い決意で、開設に踏み切ったことを振り返った。パネルディスカッションでは、公立夜間中学校の意義や、教師や生徒の募集方法、財政負担、授業内容について意見が交わされた。
 (藤村謙吾)