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マスメディアを築いたユダヤ系アメリカ人 大衆つかんだピュリツァー 鈴木 多美子


マスメディアを築いたユダヤ系アメリカ人 大衆つかんだピュリツァー 鈴木 多美子
この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報朝刊

 1920年代に米国でラジオ放送が始まり、全家庭にラジオ機が急速に普及した。ロシア系ユダヤ人デビット・サーノフ氏が全国ネットのNBCを設立し、CBSはウクライナ出身のユダヤ移民の子ウィリアム・ペイリー氏が創設した。ABCは同じく東欧系のユダヤ人レナード・ゴールデンソン氏が設立した。テレビの時代になってもユダヤ人の3大ネットワークが勢力を持ち続けた。
 発行部数の多い新聞や雑誌など出版業界の多くはユダヤ人が創設した。新聞王と呼ばれるサミュエル・ニューハウス氏は「ヴォーグ」「マドモアゼル」「ハウス&ガーデン」など人気雑誌を次々と刊行し、世界27カ国128の出版社を所有して多くの新聞を発行した。世論に影響力を持つ新聞の創設者にもユダヤ人がいる。「タイム」「ライフ」「フォーチュン」などの雑誌を創刊した、中国で生まれ育ったユダヤ人ヘンリー・ルース氏は、支那事変から反日キャンペーンを展開し中国を支援した。ルース氏のタイム・ライフ社は「ワーナー・ブラザーズ」を吸収し世界最大の総合メディア企業になった。
 大手出版業界もユダヤ人所有となっているほか、ユダヤ人の資金で運営されている。それはマスメディアが公平な情報を伝える弊害の要因にもなっている。3大ネットワークのニュースを見てみると依然としてイスラエル擁護で反アラブが顕著だ。
 米国の意思決定を左右する巨大なシステムについて書いた「ユダヤコネクション」の著者、アルフレッド・リリアンソール氏はユダヤ人でありながら反シオニズムのジャーナリストである。彼は「決定的な事は、どんな力がマスメディアを支配しているかである。出版社、編集者は広告に執心する。マスメディアは、ユダヤ系企業からの広告が重要な財源である以上ユダヤ人の反感を買うようなリスクは冒さない。ニュースは親イスラエル、反アラブとなる」と述べている。権力に忖度(そんたく)ばかりしている、日本のマスコミの公正公平ではない姿勢と全く同じであると痛感する。
 アメリカの報道など優れた作品に贈られるピュリツァー賞は、ジョセフ・ピュリツァー氏の遺志に基づき「ジャーナリストの質の向上」を目的に創設された。ピュリツァーはハンガリー系ユダヤ人で、17歳でアメリカに移住し、新聞「ニューヨーク・ワールド」を所有した立志伝中の人。権力者の不正や汚職をすっぱ抜いて大衆の心をつかみ、米で最大の購読者数を得た。扇情主義で下世話なゴシップなどの報道が「信仰心を放棄したユダヤ人」だと紙上で攻撃された。
  1909年、パナマ運河に対するルーズベルト大統領とJPモルガンの多額詐欺の報酬などを暴露、中傷した事で起訴されたが法廷では報道の言論の自由が認められた。母校コロンビア大学に多額の寄付をし、世界的に有名なコロンビア大学ジャーナリズム大学院の設立に貢献した。 (バージニア通信員)