有料

母親の沖縄戦体験小説に 西原の中村さん 若い世代「戦争考えて」


母親の沖縄戦体験小説に 西原の中村さん 若い世代「戦争考えて」 母の戦争体験をもとに小説を書いた中村陽一さん=西原町の自宅
この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報朝刊

 【西原】西原町池田に住む中村陽一さん(70)=写真=がこのほど、2013年に亡くなった母・中村吉子さんの沖縄戦体験を基にした小説「正子の生きた時代-女子軍属奇跡の生還」を自費出版した。陽一さんは「恒久平和への思いが詰まっている。若い世代にとって『戦争が起きたらどうなるか』という問いは、受け止めきれない部分もあると思うが、小説を読んで考えてみてほしい」と話す。
 吉子さんは沖縄戦で球部隊(第32軍)に徴用された。炊事班の一員として日本軍と行動を共にし、糸満市真栄平付近の壕を出た後に1人で戦場を逃げ惑った。八重瀬町の海岸・ギーザバンタで追い詰められて米軍に投降し、戦禍を生き延びた。
 陽一さんが吉子さんの死後、母の戦争体験をまとめ、それらは琉球新報の連載「母の戦争・読者と刻む沖縄戦」にも取り上げられた。小説では、陽一さんが吉子さんの戦争体験を反すうし、新たに沖縄戦関連の書籍を読む中で抱いた、後世に伝えたい「沖縄を二度と戦場にしない」という決意を込めた。
 陽一さんは、宮古や八重山をはじめ、全国的に進む軍備増強の動きに「戦争をする準備が進んでいることが許せない」と憤る。「正面を切って基地に反対する運動をすることは難しいが、せめて側面から運動を応援したい」と語った。 (藤村謙吾)