【名護】9月24日~10月1日にフランスで開催されたISA(国際サーフィン連盟)の世界選手権大会で、SUP(スタンドアップパドルボード)の男子テクニカルレースと、ロングディスタンスレースで史上初の2年連続2冠を成し遂げた荒木珠里さん(17)=名護市=は、自宅のある名護市安部を拠点に活動する。6歳からSUPを始め、世界の頂点に上り詰めた。SUPは2028年のロス五輪で正式種目になると見込まれており、夢の五輪金メダルの獲得へ、日々トレーニングを積んでいる。
荒木さんの最大の武器は、コースに設置されたブイをターンする際に、回る向きによって自在に体の位置を移動させる「スイッチスタンス」。パドルを左右両方で同じように動かせる技は世界でも荒木さんだけだと言われている。
世界選手権ではターンで相手を抜き去り、ロングディスタンスレースは2位に1分22秒の差を付ける圧勝だった。体の軸がぶれない強靱(きょうじん)な足腰や技、波と風を読む力は、沖縄で培われた。
幼い頃、父・汰久治さん(49)のボードに乗ってSUPの面白さを体感し、のめり込んでいった。「ボードに乗って投網して、ミジュン(=ミズン、ニシン科の魚)を捕まえて食べるなど、遊びながら技術を身につけていった」
約10年前から、父と共に、奄美大島~沖縄本島間でSUPに乗り、島々を渡るトレーニングを続けてきたという。汰久治さんによると、深い外洋に出ることによって、波をつかむ技術がたたき込まれていった。めきめきと上達し、小学校2年生から国内の大会に出場。同3年生からは世界大会に出場するようになり、現在までに20回以上、海外でのレースを経験している。
大会に出場する際は、常に年齢よりも上のランクで出場し、年上の強い選手に挑んできた。パワーがある外国勢に対抗するために身に付けたのがスイッチスタンスだ。荒木さんは「パワーで勝てなくても、自分の特殊な体の動きで世界に挑戦して勝てることが実証された」と語る。さらに、パドルさばきが難しい外洋に出るなど「非効率なトレーニング」(汰久治さん)により、良い波やタイミングを待つ力を培い、それが荒木さんの武器になっていった。
「リーフに囲まれた沖縄は、世界でも一番恵まれた環境だ」と語る汰久治さん。リーフ内で潮の干満によって練習を変え、リーフの外の深い海で波を読む技術が磨ける。沖縄の地で、二人三脚で積んできた練習は着実に実を結んでいる。
金メダルに加え、荒木さんのもう一つの夢は「空手のように、SUPは沖縄がメッカと言われること」。ライバルでもあるという父と日々練習を積んで活躍し、SUPの裾野が広がってほしいと願っている。荒木さんは「(ロス五輪のある)5年後はどんどん年下の選手も出てくるだろう。もっと上に、もっとレベルが上がるように努力していきたい」と力強く語った。
荒木さんは海外への大会出場に向けて、支援を募っている。汰久治さんが代表を務めるKANAKA沖縄のホームページで、Tシャツを購入することによって、支援することができる。