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翁長、全日本カートEV部門で女性初の年間チャンピオン 拠点を沖縄から静岡へ、目標のプロへ着実成果


翁長、全日本カートEV部門で女性初の年間チャンピオン 拠点を沖縄から静岡へ、目標のプロへ着実成果 2位でフィニッシュして全日本カート選手権EV部門で年間チャンピオンを決めた翁長実希=10月22日、三重県(JAPANKART提供)
この記事を書いた人 Avatar photo 古川 峻

 女性ドライバーのみで競うカーレース4輪シリーズ「KYOJO CUP」昨年覇者の翁長実希(浦添商高―沖縄国際大出、26歳)が、新天地の静岡県で活躍している。沖縄から富士スピードウェイがある静岡へ拠点を移し、「武者修行」を経て今年から老舗レーシングガレージ「RSS」の所属ドライバーとなった。国内カートレース最高峰の全日本カート選手権では、女性として初の年間チャンピオンになるなど、目標のプロへ向けて着実に成果を残している。

全日本カート選手権のEV部門で年間王者となった翁長実希=10月22日、三重県(JAPANKART提供)

 大学卒業後の2022年、レースに参加する目的で自らの会社「Fluto」を立ち上げ、静岡県御殿場市に移り住んだ。KYOJO CUPに参戦する傍ら、スポンサー集めをしたり、サーキットに足しげく通ったりしてレースを学ぶ日々を過ごした。山登りで体力づくりに励むなど「誰よりもレースに向き合ってきた自信がある」と振り返る。

 今年1月からは、RSSの田村佳則代表の紹介でRSSに所属してプロを目指すように。今季は沖縄トヨタ自動車とコラボレーションし、「GR86/BRZ Cup」にも参戦している。「心の中にはいつも沖縄がある」と沖縄レーシング界の振興や後進の育成を見据えての活動だ。

 今季は、全日本カート選手権のEV部門にも初参戦した。「がむしゃらにレースに出るのではなく、プロになるために何を求められ、何ができるのかを考えるようになった」。全日本選手権は2006年の第1回大会から女性の年間チャンピオンが生まれていない。EV車の将来性や自らのカート経験を考慮して、「チャンピオンになる」と会社に出場を願い出た。

 シリーズ第1戦と第2戦は表彰台に上がらなかったが、確実にポイントを稼ぎ、10月の最終第3戦までにランキング2位につけた。「リスクをできるだけ小さくして確実に行った」。シリーズ王者の候補選手が8人もいる混戦の第3戦は、落ち着いたレース運びで制した。

 コース15周の決勝は4番手の位置に付き、スタート直後に3位に踊り出た。序盤から1、2位が激しく競り合うのをカート1台分ほど離れた位置でうかがった。「後半に落ちてくるかもしれない」。EV車は車体が重いため、後半のパワーダウンを狙った。

 仕掛けたのは11周目に入った時だ。1、2位の差が出たところで「隙があった。抜いてトップを捉える」とするりと2位に入れ替わり、後続と差を広げた。1位の選手は体重が軽いこともあり、最後までスピードを落とさなかった。2位でフィニッシュし、ポイントランキング1位で年間王者に輝いた。

 今季は26日にあるKYOJO CUPとGR86/BRZ Cupを残すのみだ。KYOJO CUPは2連覇が懸かっている。「ディフェンディングチャンピオンとして優勝したい」と万全を期す。

(古川峻)