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目標8強へ準備万全 きょう代表14人発表 ハンドボール男子・東江雄斗<沖縄からパリへ>8


目標8強へ準備万全 きょう代表14人発表 ハンドボール男子・東江雄斗<沖縄からパリへ>8 2大会連続の五輪出場を目指すジークスター東京の東江雄斗=4月21日、那覇市の県立武道館
この記事を書いた人 Avatar photo 古川 峻

 昨年10月のハンドボールパリ五輪男子アジア予選で、日本代表が36年ぶりに五輪の自力切符をつかんだ瞬間、主将の東江雄斗はしばらく両手に顔をうずめていた。「プレッシャーから解き放たれて自然と涙が出てきた」。背景には、学生時代から選ばれてきた日本代表での数多くの敗戦の経験がある。「先輩たちの悔しい思いを晴らすことができた。ハンドボール界に新たな歴史の1ページを刻めたことがうれしい」

 少年時代に抱いた「代表のポイントゲッターになる」という夢は、東京五輪の開催が決まった時に目標に変わり、司令塔として夢の舞台に立つことができた。だが東京五輪後、「代表はもういいかな」と燃え尽き症候群のようになっていた。代表の主将を任されたが、22年アジア選手権は代表メンバーに新型コロナウイルス陽性者が出て日本は出場を辞退した。日本リーグも膝の故障などのため本調子からほど遠かった。

 状態を改善するため、22年12月のリーグ途中に膝の手術を行った。この時期を選んだのは、五輪予選に間に合わせるためだ。「ベテランから中堅、若手までポテンシャルのある選手がいて、まとまればアジアのどの国より強いと勝手に思っていた」。代表の仲間の存在が、気持ちを切り替えさせてくれた。

東江 雄斗

 コンディションを仕上げて迎えたパリ五輪アジア予選は、試合ごとに開いた選手ミーティングでチームの一体感が生まれ、試合を経るたびに成長する実感があったという。東江は主将として、監督が目指す方向性と選手の戦術面の提案が合致するように調整した。

 「どうやったら仲間をたきつけられるか」とメンバーへの声掛けも自然と意識するように。末っ子で自由な気質の東江を知る周囲も、その変化に驚くほどだった。五輪予選の決勝前の円陣では、観客のほぼ全員が相手を応援する状況で「最高の舞台が整ってる。あとは最高のプレーをするだけだ」とはっぱを掛けた。

 代表の司令塔は若手の安平光佑(RKバルダル)に変わっており、チーム内の競争は厳しい。東江は攻撃が停滞している時にテンポやリズムを変え、自らカットインするだけでなく、仲間を生かすアシストも積極的に見せるようになっている。「チームが勝つための役割に徹している」と語る。

 16日から行われている強化合宿の19人から、14人の五輪代表が28日に発表される。東江はけがしないことを第一に、肉体強化など五輪へ向けた準備を進めてきた。目標は東京大会で達成できなかったベスト8に入ることだ。不動の日本代表は「(代表の)自覚ではないけど、絶対五輪には出たい気持ちがある」と決意をにじませた。

 (古川峻)


 あがりえ・ゆうと 1993年7月6日生まれ。浦添市出身。神森中―興南高―早大出。2015年に日本代表に初選出。日本リーグの大同特殊鋼フェニックスを経て、21年からジークスター東京に所属。司令塔として東京五輪に出場した。