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【総評】4強すべて「私学」制した興南の強さは? 塗り変わった勢力図 高校野球沖縄大会


【総評】4強すべて「私学」制した興南の強さは? 塗り変わった勢力図 高校野球沖縄大会 優勝し、ダイヤモンドを回る興南ナイン=7月21日、沖縄セルラースタジアム那覇
この記事を書いた人 Avatar photo 名波 一樹

 第106回全国高校野球選手権沖縄大会は6月22日から7月21日にかけて行われ、決勝で興南が延長十回タイブレークの末に4―3でエナジックにサヨナラ勝ちし、2年ぶり15度目の優勝を果たした。4月の春季大会決勝でエナジックに0―2で敗れていた興南が、雪辱を果たした形となった。4強全てが初めて私学となるなど、沖縄高校野球の勢力図が塗り変わった今大会を振り返る。

“伝統”興南が王座

 春季優勝を逃した興南は、第2シードから今大会を勝ち上がってきた。チーム打率は2割8分9厘。1試合平均失点1・2の堅守から流れをつかみ、確実に点を奪取した。決勝ではエナジックを今大会最小の3得点に抑えた。大会を通し打率4割超えの山川宗紘を先頭に置き、それぞれが守備の間を抜く打球で出塁。犠打でつないだほか、勝負どころでバスターを決めるなど技術も光った。

 1年生の起用も多く、春より増した選手層の厚さも強みとなった。投手陣は、けがから復活したエース左腕・田崎颯士が存在感を示した。最速149キロの直球にスライダーなど計5種の変化球を織り交ぜ計41奪三振をマーク。決勝で継投した金城勇希は2回と3分の2を無失点で力投し、再び田崎につないだ。先発登板した準々決勝は6回を10奪三振無失点の好投を見せた。

“新鋭”エナ、あと一歩

 エナジックは創部3年目で春季大会初優勝を果たし、代名詞の「ノーサイン野球」でその名をとどろかせた。

 夏の選手権大会も快進撃を続けたが、あと一歩で甲子園出場を逃した。チーム打率は3割5分5厘で、1試合平均7・4得点。快足の1番・イーマン琉海や強肩捕手・龍山暖らナインは、機動力に加え高い総合力で隙のない野球を展開。沖縄尚学やウェルネス沖縄などを破り、4勝のうち3試合はコールド勝ちだった。興南との決勝はタイブレーク戦に突入する熱戦を演じた。

 ウェルネス沖縄は主砲・大濱安綺をはじめとする強打線で3割5分2厘(4試合)と高いチーム打率を誇った。4強唯一のノーシード・KBCは、崎濱海翔ら5投手で試合をつくり、平均得点9(5試合)と攻撃力も上々。シード校の宜野座を破った具志川商を下した。

塗り変わる勢力図

 夏の選手権県大会の4強が全て私学となったのは、県高校野球史上で初めて。興南は創部62年目、エナジックは3年目、ウェルネス沖縄は7年目、KBCは創部10年目。決勝は“伝統”の興南と、“新鋭”のエナジックが争った。

 2018年にKBCが創部4年目で春季大会初優勝、ウェルネス沖縄やエナジックも後に春の頂点に。夏は2020年の独自大会でKBCが準優勝するなど、ここ数年間で私学が躍進を続けている。

 群雄割拠の沖縄高校野球界の勢力図を、エナジックをはじめ創部10年以内の新しいチームが塗り替えていく大会となった。

 夏の甲子園14度目の出場となる興南。2022年は初戦敗退だったが、頂点を目指して戦う。全国選手権大会は8月4日に組み合わせ抽選会を行い、同7日から阪神甲子園球場で開幕する。

 (名波一樹)