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第二の故郷、「YUKIYA」コール背に駆け抜けた273キロ 新城56位、パリ五輪自転車ロード


第二の故郷、「YUKIYA」コール背に駆け抜けた273キロ 新城56位、パリ五輪自転車ロード ゴールのトロカデロへ駆け抜ける新城幸也(右)=3日、パリ(古川峻撮影)
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 パリ五輪で自転車男子個人ロードレースに出場した新城幸也(バーレーン・ビクトリアス)は56位で4度目の五輪レースを終えた。

 レースを終えた新城は五輪マークが掲げられたエッフェル塔をじっくり眺め、空気を味わっていた。最後と見込む五輪は第二の故郷、フランスのパリが舞台だった。「素晴らしいエッフェル塔の下にゴールできて最高。270キロがあっと言う間だった」。大きな拍手が送られる中、潤んだ目でニカッと笑った。

 八重山高卒業後の2003年4月、プロの福島晋一に誘われてフランスに降り立った。「まさか五輪に4度出るなんて1ミリも思っていなかった」。帰国後に大学受験に専念するつもりが、レースで好結果を残し「自転車の生活っていいな」と
思うように。3カ月の滞在を終えると親に黙ってフランス行きのチケットを購入した。
 両親に再びフランス行きを告げると、援助してくれた。フランスのアマチュアレースで修行し、06年に日本チームでプロに。09年からフランスのチームに7年所属し、イタリアの1年を挟み現在のバーレーンで8年目を迎える。ツール・ド・フランスの日本人初完走など数々の偉業を成し遂げ、「一個一個目標を達成していった」。

 普段はチームのアシスト役に徹するが、今年は個人の目標に五輪を掲げ、チームも理解してくれた。6月の全日本選手権以降、270キロの本番へ準備を積んできた。「自分のためのレースは今日で最後」とすがすがしい表情だった。

 レース中は沿道から「YUKIYA」コールが沸いた。「フランスのチームにいたからかな。うれしかった」と力に変えた。「石垣からフランスに来てこういう経験ができた。覚悟を持ってやればかなうことを皆に知ってもらいたい」

 レースの土ぼこりで鼻元が少し黒ずみ、目元の日焼け跡は薄く、まなざしはまっすぐだった。