那覇市出身のプロバレエダンサー安村秀熙(ひでき)(24)が、2021年9月にロシア・ウラルバレエ団に入団して2年。以前経験を積んだドイツやルーマニア、中国と比べて「要求されるものが格段に違う」というバレエ大国の地で、週4~5回の公演をこなす。並行して早稲田大学人間科学部eスクール(通信教育)でダンス科学を学んでおり、実践と研究の両面から技術に磨きをかけている。
21年9月、ロシア中央部に位置するエカテリンブルクのウラル国立歌劇場バレエ団に、ソリストとして入団した。まず驚かされたのは、公演の多さだったという。練習やリハーサルの時間が十分にないまま、本番はすぐにやってくる。入団後の初公演では「ジゼル」でパ・ド・ドゥを踊ったが、舞台上で足が動かなくなりそうになるという、“洗礼”を受けた。
日々試練の連続だが、練習や公演を重ねるごとに力の入れ方や効率的なステップが次第に身につき、成長を実感している。「ロシアのバレエには身体的なタフさと力強さがある。質の要求も高く、学びは多い」と話す。
入団から約半年後にウクライナで戦争が始まり、周囲には帰国した外国人ダンサーもいた。自身もどうすべきか悩んだが「この環境下で得るべきものを得たい」と決心し、とどまることを選択した。
22年6月には、ロシア随一のボリショイ劇場(モスクワ)のガラ公演で踊った。本来なら世界中の名だたるスターダンサーが舞う権威ある場だが、ウクライナ侵攻の影響がバレエ界にも及ぶ中で舞い込んだ「おそらく二度とない機会」(安村)だった。天井の高さや舞台の広さ、壮大なオーケストラなど、全てが規格外の劇場の迫力に圧倒されながら、悔いを残さぬよう踊りきった。
早大の通信教育では20年にわたるバレエ経験を踏まえつつ、ダンス科学の理論を研究している。「ダンサーとして上を目指すのはもちろんだし、バレエを知りたいという意欲もある。バレエの世界にもっと踏み込んでいきたい」と3年目を見据えた。
(當山幸都)