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当事者が安心できる社会を 若年性認知症フォーラムで希望大使らが議論 「共に考えて」


社会
当事者が安心できる社会を 若年性認知症フォーラムで希望大使らが議論 「共に考えて」 トークセッションする関係者たち=14日、浦添市
この記事を書いた人 Avatar photo 嘉陽 拓也

 認知症という病名ではなく、一人の人として接してほしい―。

 認知症への理解促進のため14日に浦添市のアイム・ユニバースてだこホールで開かれた県認知症県民フォーラム。初の認知症希望大使として委嘱を受けた、若年性認知症の新里勝則さん(64)、喜屋武直子さん(62)、大城勝史さん(48)は「当事者が安心して暮らせる社会を目指すため、共に考えてほしい」と呼びかけた。フォーラムで語られた当事者や支援者の意見を紹介する。

認知症は怖くない

 委嘱を受けた3人があいさつで語ったのは、認知症への偏見をなくしたい思いや、それぞれが前向きに暮らしていることだった。

 新里さんは「認知症になっても、できることはたくさんある。偏見をなくし、悩みを抱えている当事者と交流したい」と語り、喜屋武さんは「認知症を怖いと言う人は多い。そういうことがないようにしたい」と訴えた。

 2016~19年に病名を公表して講演活動を続けていた大城さん。経験を基に「診断後は将来の不安に押しつぶされそうになると思うが、私を見てほしい。多くの人に支えてもらいながら、私らしい人生を送ることができている」と力強いメッセージを送った。

トークセッションする関係者たち=14日、浦添市

人と関わる大切さ

 トークセッションでは当事者とつながることの大切さが語られた。

 診断直後、インターネットで病状を調べた新里さんは「2年で(物事が)分からなくなり、5年で寝たきり」との情報で不安が強くなり、2年間引きこもっていたという。フォーラムに招待された京都府認知症希望大使の下坂厚さん(50)も新里さんと同じような情報に触れて動揺したという。それでも、若年性認知症当事者の講演会に参加したことで「診断から数年たった人がなぜこんなに元気なのか」と、前に踏み出し始めた。

 同じ境遇の人に勇気をもらう体験は新里さんにもあり、かつて大城さんが講演活動をしていたことを見聞きした。新里さんは「勇気のある人と思ったが、そのおかげで一歩前に出るようになった」と話した。

支援のあり方

 認知症患者に関する支援課題についても意見が交わされた。若年性認知症の患者が利用するデイサービスの活動内容が、高齢者と同じ内容になりがちで、抵抗感があるという点も強調された。
 新里さんは十数年前、親世代の高齢者と色塗りするデイサービスが苦痛で、昼食以外は近隣の公園で時間をつぶしていたという。下坂さんは、東京都内の事例として洗車やポスティング、草むしりなどの仕事が選べるデイサービスを紹介し、「沖縄でも選択肢が増えるといい」と期待した。
 若年性認知症支援コーディネーターの安次富麻紀さんはビリヤードやゴルフ練習などを提供する県内デイサービスを紹介しつつ、「若年性の場合は体が元気なため、介護保険の利用まで時間がある。若い人が通える働くデイサービスが増えてほしい」と語った。

(嘉陽拓也)