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100年越え新たな視点 新垣七奈が一人芝居 ジャン・コクトー「声」


100年越え新たな視点 新垣七奈が一人芝居 ジャン・コクトー「声」 ジャン・コクトー「声」の一人芝居で女を演じる新垣七奈=那覇文化芸術劇場なはーと(北上奈生子撮影・なはーと提供)
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 フランスの作家ジャン・コクトー(1889―1963)による戯曲「声」が10月21、22両日、那覇市の那覇文化芸術劇場なはーとで上演された。アーティストがコラボレーションする同劇場の「出会いシリーズ」第1弾として、京都拠点の演出家・和田ながらと県内で活動する俳優の新垣七奈が創作した。約100年の時空を飛び越える、新たな視点を披露した。
 「声」は、1930年に初演された戯曲。1人の女が、別れた恋人とおぼしき相手との電話を引き延ばそうとする様子が一人芝居で繰り広げられる。
 舞台は女の部屋。「観客それぞれの網膜を通して見てほしい」との意味を込め、背景やベッドなど小道具は全てクロマキーの色である緑にそろえた。女役の新垣は、相手と話す時は甘えるような声、途切れそうになるとヒステリックに。表情を変えながら、狂気さとかわいらしさを混在させた。
 女と相手をつなぐ電話は石。ストーンヘンジなどメッセージ性もある石の「原始的でデバイス的」という点に着目したという。
 最終的に女が死ぬという結末の戯曲。新垣の切羽詰まった演技にその悲劇を予想したが、開始と終了に鳴ったゲーム音で、メタな視点に導かれた。
 「相手が見えない電話でのやり取りは裏切り合いのゲームのよう」と和田。男に依存し狂って生涯を閉じる約100年前の「声」より、女の強さやしたたかさを感じた。
 舞台美術は彫刻家の丹治りえ、ドラマトゥルクは劇作家の兼島拓也が務めた。
  (田吹遥子)