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沖縄の再団結 タブー排し話し合おう<佐藤優のウチナー評論> 


沖縄の再団結 タブー排し話し合おう<佐藤優のウチナー評論>  佐藤優氏
この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報社

 米海兵隊普天間飛行場の移設に伴う辺野古新基地建設で、大浦湾側の軟弱地盤改良工事に向けた設計変更申請の承認に関して、斉藤鉄夫国土交通相が玉城デニー知事に代わって承認するために提起した代執行訴訟の判決で、福岡高裁那覇支部(三浦隆志裁判長)は20日、国の請求通り県に承認するよう命じた。日本による沖縄に対する差別が構造化している現状で、この判決には何ら意外性がない。日本の中央政府や裁判所はそういうものなのだと淡々と受け止めればいい。

 <法定受託事務の代執行の判決は史上初。大浦湾の埋め立て工事は重大局面を迎えた。防衛省関係者によると、本格的な着工は年明け以降になるという。複数の県関係者によると、知事は期限内に承認しない公算が大きい。/判決は県に対し、判決文の送達を受けた翌日から、休日を除く3日以内に承認するよう命令。県は20日に判決文を受け取ったため、25日が承認の期限となる。県が承認しない場合、国が承認を代執行し、大浦湾側の工事が着手されることになる。県は27日までに上告できるが、最高裁で逆転勝訴しない限り工事は止まらない>(21日、本紙電子版)。

 玉城デニー知事が、ヤマトの裁判所が勝手に決めた期限に拘束されないという判断を示すのは、日本とは歴史的に異なる過程を経た琉球王国を継承する沖縄の最高責任者として当然の態度と思う。

 この機会に、沖縄の団結を再度、確認することが重要と思う。筆者は、繰り返し述べていることであるが、辺野古新基地建設には反対だ。沖縄、ヤマト双方の安全保障にとっても、この基地は必要ないと考える(沖縄人を威嚇、萎縮させる必要があると考える一部の日本人政治エリートにはこの新基地が必要なのだろう)。そもそも米海兵隊が沖縄にいなくても沖縄とヤマトの防衛には支障がないと思っている。同時に筆者と違う見解を持つ沖縄人の声にも真摯(しんし)に耳を傾ける必要があると考える。

 このあたりで保守、革新の枠を超えて、われらが愛する沖縄の現在と未来のために、一人一人がほんの少しだけ今までよりも勇気を出して話し合おうではないか。沖縄人同胞の中には、事態がここまで進んでしまった以上、新基地の受け入れはやむを得ず、その見返りを得た方がいいと考えている人もいると思う。そういう人は黙っていないで、自分の意見を素直に書いて琉球新報に送ればいい。

 また、ごく少数だと思うが、日本の国防のために沖縄は防人(さきもり)の役割を果たすべきで、新基地建設を積極的に推進すべきと考えている沖縄人もいると思う。そういう人も自分の意見を遠慮せずに書いて琉球新報に送ればいい。琉球新報統合編集局は優れたプロ集団だ。沖縄のことを真摯に思う沖縄人の意見ならば社論と異なっていても、読者に紹介するという選択をすると筆者は思っている。

 そうして一切のタブーを排して、この状況で沖縄が日本とどう付き合っていくかを本音で話し合うべきと思う。こういう過程自体が沖縄の自己決定権を強化すると筆者は考える。

(作家、元外務省主任分析官)

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