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共産党 第29回大会 党の体質改善が不可欠<佐藤優のウチナー評論>


共産党 第29回大会 党の体質改善が不可欠<佐藤優のウチナー評論> 佐藤優氏
この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報社

 1月15~18日まで静岡県熱海市で日本共産党第29回大会が行われた。筆者が最も注目していたのは、党首公選制を訴える本を文藝春秋社から出した関連で「分派活動」をしたとして除名された松竹伸行氏の再審査請求に対して党大会がどう対応するかだった。松竹氏は対話の人だ。幹部自衛官や保守派の政治家にも松竹氏ファンは多い。また有能な編集者であることについては業界でも定評がある。
 現在発売中の月刊「文藝春秋」2月号で筆者は松竹氏と「志位委員長よ、なぜ私が除名なのか」と題する対談を行っている。松竹氏は、温厚だが強い信念を持っている人で、共産党を心の底から愛している。人生の全てを共産党のためにささげている人と言ってよい。松竹氏の見解にどこまで耳を傾けることができるかで、共産党がレーニン、スターリン流の「鉄の規律」である民主集中制を脱却することができるか分かると思っていた。その結果は、想定の範囲内であったが、あの党の組織原則はスターリン主義的だということが再確認された。

 <日本共産党第29回党大会は16日、規律違反で除名処分となった松竹伸幸氏から提出された除名処分撤回を求める「再審査請求書」について大会幹部団が再審査し、請求を却下することを決定、代議員全体の拍手で承認しました。/(中略)山下氏(引用者註*山下芳生副委員長)は、京都南地区委員会常任委員会と京都府委員会常任委員会の連名による「除名処分決定文」に明記されている処分理由に対して、松竹氏の「再審査請求書」がいずれも反論できていないことを3点にわたって説明。松竹氏の言動が党規約や党綱領を攻撃するもので除名処分は覆るものではないことを確認し、手続き上も党規約にもとづき適正におこなわれたことを報告しました。また、松竹氏が除名処分後、同調者を組織する活動をおこない、同調者に本心を隠して大会代議員になるよう呼びかけたことも指摘。党規約第4条「党の綱領と規約を認める人は党員となることができる」の規定に照らし、「松竹氏が党員の立場を喪失していることは明瞭」だとのべました>(17日「しんぶん赤旗」電子版)。

 こういう重要事項について採決をとらず拍手で決定するのは適当ではないと筆者は考える。

 沖縄との関係でも、共産党の自己絶対化が深刻な影響を現在も及ぼしている。

 第1は、沖縄人との自己意識を強く持っていた徳田球一元日本共産党書記長に対する評価だ。徳田氏は沖縄独立論者だった。徳田氏の独立論を現在の共産党は誤りであったとして切り捨てている。また、徳田氏に従って1950年代の共産党の武装闘争路線に加わり、破滅していった沖縄人党員についても顧みようとしない。

 第2は、現在も共産党が日本による沖縄差別に口を閉ざしていることだ。共産党にとっての主敵はアメリカ帝国主義とそれに従属する日本政府だ。日本人と沖縄人の間に差別があるという言説を取ると主敵を見失うという観念論に共産党はとらわれている。

 沖縄の共産党員の中には、このような党中央の姿勢に違和感を持っている人もいると思う。しかし、民主集中制というスターリン主義的「鉄の規律」を現在も維持している組織では、党内のことを党外に持ち出すと松竹氏のように除名されるリスクがあるので、筆者を含む非党員とは議論できない。沖縄の自己決定権を強化するためにも共産党の体質改善が不可欠と思う。

(作家、元外務省主任分析官)