「沖縄と仲良くなりたくて悲劇を伝えたくて30年歌ってきた」 宮沢和史3年ぶりに沖縄でワンマンライブ


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 今年でデビュー30周年を迎えるミュージシャン・宮沢和史のワンマンライブ「時を泳げ魚の如く」が4月29日、沖縄市のミュージックタウン音市場で開かれた。16年に体調不良で引退し、沖縄でのワンマンライブは約3年ぶり。14年に解散したTHE BOOMや多国籍バンドのGANGA ZUMBA(ガンガズンバ)の曲のほか、5月22日発売の新アルバムに収録した曲など、宮沢の歩みを感じさせる21曲を披露した。再び沖縄のステージに帰ってきた宮沢は、ピアノ、ギター、ドラムのシンプルな構成の中、自然体で沖縄への愛を真っすぐに熱く歌った。

力強く「島唄」を歌う宮沢和史=4月29日、沖縄市のミュージックタウン音市場

 椎間板ヘルニアを患い16年に引退を決めた宮沢は、約3年ぶりに音市場でマイクを握った。現在は自身の体調と相談しながら、のんびりと音楽活動を行っている。ライブは原宿の道端で歌っていたという「不思議なパワー」や「光」の弾き語りで始まった。息子を授かった時の気持ちを表現した「JUSTIN」、「からたち野道」「Perfect Love」を歌い、「風になりたい」で宮沢は軽快なステップのリズムを踏んだ。

 三線を持ちスタンドマイクの前に立った宮沢は「30年前に島唄を作った。お叱りも受けたが、島唄を書いていなかったら出会えなかった人がいる。島唄を作らせてくれてありがとう」と感謝を伝え「島唄」を歌った。精魂こめた歌声は力強かった。島唄に誇りを持ち、真っすぐに沖縄と向き合う宮沢の姿に観客は引き込まれた。

 後半はTHE BOOMの「天国へ落ちる坂道」や「真夏の奇蹟」、ガンガズンバの「Discotique」などを情熱的に歌い会場を熱くした。観客も宮沢の音楽に身を委ね、体を揺らした。MCで引退時のことを振り返り「歌うのは呼吸をするようなことだ。歌手を辞め存在価値を意識することもあったが、後悔はない。体調と相談しながら歌手としての歩みを模索したい」と語った。宮沢は新アルバムに収録されている「梅花藻」を「新しい扉を開く人の背中を押す曲だ」と紹介し伸びやかに歌った。

 アンコールでは「遠い町で」「世界でいちばん美しい島」をしっとりと披露した。最後に宮沢は「沖縄と仲良くなりたくて、沖縄の悲劇を伝えたくて30年近く歌ってきた。僕みたいに大和の人間にもウチナーを愛し、この島を思っている人がいる」と語り「シンカヌチャー」を歌った。沖縄に対する宮沢のひたむきな愛を感じ取った観客は次々と立ち上がってカチャーシーを踊り、幕を閉じた。
 (関口琴乃)