重厚せりふで引き締め 史劇「大新城忠勇伝」


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切腹しようとする大新城親方(前列左端、与座ともつね)を止める太子(前列右から2人目、饒平名沙奈)=8日、那覇市民会館

 琉球史劇「大新城忠勇伝(うふあらぐしくちゅうゆうでん)」(那覇市主催・那覇市文化協会主管)が8日、那覇市民会館で上演された。史劇に定評のある与座ともつねを中心に、重厚なせりふ回しと見えを切る男らしい所作で舞台を引き締めた。

現代明朗劇「ポーポーハンシー」も上演された。7日にはフォーラム「琉球史劇・時代劇の魅力」(那覇市文化協会主催)が同会館で開催され、史劇の魅力と継承に向けた課題を語った。
 「大新城―」は渡嘉敷守良作、玉木伸演出。尚清王亡き後、大新城親方(ともつね)は遺言に従い長男の太子(饒平名沙奈)の王位継承を主張する。一方、津堅親方(春洋一)は、太子が口の利けないことを理由に側室である妹(宮里良子)が生んだ次男(饒平名栞帆)を推す。
 大新城と津堅が、世継ぎをめぐり激論を交わすのが前半の見せ場だ。正座したまま動かないが、「三国志」などを引用した知的な論戦と、迫力あるせりふ回しで引き付ける。
 那覇士族らが加勢し、大新城は再び津堅と対峙(たいじ)する。言葉による“冷戦”から立ち回りを交えた熱い戦いに変わる。だが太子はどうしても口が利けない。困窮極まり切腹しようとする大新城。瞬間、太子が「待て!」と言葉を発し、客席から拍手が起きた。
 大新城が「今日(きゆ)ぬ誇(ふく)らしゃや何(なをう)にじゃな譬(たてぃ)る…」と詠んで幕。ただ幕が下りるのが早すぎて、せりふに続く地謡の「かじゃでぃ風」が聞こえなかったのは惜しかった。本来は、この後に津堅が謀反を企て捕まる話が続くが、今回は省略され残念だった。
 ともつねの迫力ある演技は圧巻だ。同時に中堅・若手が早く継承しなければ、史劇の技は消えてしまうのではないかという不安もよぎった。今後、継承が活発化することを期待したい。その他の出演は与座朝惟、嘉陽田朝裕、金城真次、高宮城実人ら。地謡は徳原清文、仲宗根盛次ら。
 7日のフォーラムは、演出家の幸喜良秀が基調講演した。今後の課題として、若手作家の育成や、女性が活躍できる作品を生み出すことなどを挙げた。
 パネルディスカッションは八木政男、春洋一、吉田妙子、神谷武史が登壇した。神谷は学校で琉球の文化を学んだり、各市町村に文化振興の専門職員を置いたりすることで、実演家の雇用や人材育成、沖縄らしい地域づくりにつながると語った。与那覇晶子がコーディネーターを務めた。
(伊佐尚記)

※注:高宮城実人の「高」は旧漢字