コラム「南風」 “親ばかさん”との出会い


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 うりずんの風に吹かれるように心が潤う、そんな出会いがありました。
 ダウン症候群の子たちの写真集「よんな~そだて!」の完成を取材した時のことです。この写真集にはお父さんお母さんが撮影した、53人の子どもの笑顔が綴(つづ)られています。どれも幸せあふれる瞬間を切り取っていて、食卓の香りや、公園の日なたの暖かさ、笑い声まで伝わってきます。

 本を発行したDS―OKINAWA代表の宮里裕美さんは「かわいいわが子を皆に見てほしいという“親ばか”の気持ちで始めました」と語ります。6年前に初めて写真集を発行した時、同じダウン症の子を授かった両親たちから大きな反響を得たそうです。たくましく育つ子たちの姿は、新米パパママにとって、不安や葛藤を乗り越える力になったのです。
 今回初めて出品したお母さんは、震える手で完成した本を受け取りましたが、開いた瞬間、顔がほころびました。ポロポロと涙を流すお母さんもいました。「私が最初の写真集に支えられてきたから、この本も多くの人に届いてほしい」と、膝の上の愛娘(まなむすめ)に微笑(ほほえ)みかけました。のちに宮里さんから「写真集への出品を迷っていたお母さんが、テレビ取材も引き受けてくれて驚いた。きっと彼女にとって一つのステップになったんじゃないか」と聞き、胸が熱くなりました。
 取材活動の中で、いろんな“ばか”に出会います。芸事ばか、スポーツばか、町おこしばか…。みんな汗をかき、涙を流し、それでも前を向いている一生懸命な人たちです。私の仕事は、その愛や熱意をテレビの向こう側に伝えることで、喜びとやりがいを感じています。
 この春、OTVの夕方ニュースが生まれ変わり「みんなのニュースおきCORE」が始まりました。どんな“おばかさん”に出会えるのか、心が躍ります。
(金城わか菜、沖縄テレビ放送アナウンサー)