【チャイナ網路】中国の思惑と台湾農業


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わたなべ・ゆきこ 西南学院大学卒。台湾大学文学修士。現在、沖縄大学人文学部・国際コミュニケーション学科講師。琉球新報編集局嘱託。

 旧正月の直行便で、台湾経済界の歓迎ぶりに気をよくした中国政府は先ごろ、「台湾の農産物の輸入促進」を提言した。直行便が大陸に進出している台湾企業の悲願であったように、台湾農家も最後の望みを大陸市場に託している。

 耕作面積が狭く、生産コストの高い台湾の農産物は、2002年のWTO加盟以来、安い輸入品に押される一方だ。価格は平均で、3割から4割の下落。特に昨年は、果物の生産過剰で価格は暴落し、売るより鳥の餌にでもした方がましと、収穫を放棄する農家も少なくなかった。

 が一方で、台湾の農産物が、上海では“高級果物”として得られているのも事実だ。価格は時として地元の数倍。現在、12種の果実が台湾から輸出されているが、高い関税を避けて香港を経由する面倒もあり、大陸の購買力の成長の割に、輸出の伸びは鈍い。

 熱帯果実は、茶や花きに並び、大陸での人気も抜群だ。しかも生産者は、与党民進党の本拠地、台湾中南部に集中している。中国の提言は、民進党支持者の抱き込み策なのか?うがった見方もないわけではない。