prime

「『諦めない』ための情報を」安部弘祐さん <私たちのSDGs GSCOメンバー紹介 6 >


「『諦めない』ための情報を」安部弘祐さん <私たちのSDGs GSCOメンバー紹介 6 >
この記事を書いた人 琉球新報社

安部 弘祐 – Kousuke Abe – 琉球大学工学部 / どん底1日目ー難病当事者が綴る手紙ー出版委員会

宮崎県出身。宮崎県立延岡星雲高校卒。琉球大学工学部4年。どん底1日目ー難病当事者が綴る手紙ー出版委員会代表。高校卒業、大学合格と同時に難病のネフローゼ症候群を発症。大学1年生の時には入院生活をしながら大学に通っていた。入院中、孤独感や誰にも相談できず自殺まで考えた経験から、どん底1日目ー難病当事者が綴る手紙ーシリーズを企画し、出版活動を行っていた。

 ―どのような問題意識で活動されているのか教えてください。 

 私は、セーフティーネットが必要な人に対して、セーフティーが届いていない、活用されていないという現状に課題意識を持っています。その中で目先では奨学金という領域にいます。

 奨学金という領域では、大きく3つの課題があります。1つ目が特に大きな課題で、「必要な人に対して、情報が届いてない」ということです。以前、南城市給付型奨学金が応募者ゼロという記事が琉球新報様の記事で取り上げられていました。まさにこの課題です。

 2つ目は、本当は給付型(返済不要)奨学金なのに「奨学金≒学生ローン」というイメージから奨学金を活用しない人がいることです。学生ローンというイメージは、一定メディアでの印象が要因かもしれません。しかし、この世の中には1万6000種類も奨学金があり、返済不要の奨学金も多くあります。このことを知られていないのは課題だなと感じています。

 3つ目は、奨学金自体を知らずに「お金がないから進学をあきらめる」という方も多くいることです。奨学金情報が集約されていないことも原因ではあります。ただ、より構造的に見てみれば、高校の進路担当の先生が数年おきに変わってしまうことで高校に奨学金知識がたまりにくいことや、同じ研究室にしか奨学金の案内がない(告知先を財団が持っていない)などの課題もあります。

 私自身、現役大学生ですが貸与型(返済が必要)奨学金を借りて、大学生活序盤を過ごしていました。しかし後々奨学金を調べてみると、対象となる給付型(返済不要)奨学金が多くありました。私はすでに貸与型奨学金を借りているので遅いですが、私より年下の大学生・高校生たちには同じ状況にはなってほしくないなと感じています。

 ―そのためにどのような行動を起こしているのでしょうか。

 大きくは2つアクションしています。1つ目は、奨学金情報サイトを運営している株式会社ガクシーにて長期インターン生として仕事をしています。しっかりと奨学金の情報を届ける。企業とタッグを組み新しい奨学金を作り、若い人に対してお金が流れる。そんな事業開発に取り組んでいます。

 2つ目は、私自身がメディア露出することで、セーフティーネットを知ってほしいということです。私は、奨学金文脈以外にも難病当事者であり、貧困家庭で育ってきました。この育つ過程で、様々な社会的なセーフティーネットに助けられてきました。例えば、認定NPO法人D×Pさんが運営している「不登校や高校中退、引きこもり状態、困窮などの困難を抱えた10代がLINEで相談することができる窓口」であるユキサキチャットに、人生相談や食糧支援をいただいたり、血縁関係ではない友達や社会人の方に相談や支援などです。しかし、少し客観的に見れば、セーフティーネットを知っている友達から紹介がなければユキサキチャットを知ることもなかったですし、返済不要の奨学金も今の会社でインターンをしていなければ知りえませんでした。

 なので、少しでも「必要な人に届いてほしい」という想いで、インタビューやイベントへの登壇は極力引き受け、私の事例を聞いた人が支援を受けれるような流れができたらと考えております。

 ―どんな沖縄になってほしいかと考えていますか。 

 当人がコントロールできないところが原因で「諦めない」沖縄になってほしいなと思います。奨学金で言えば「家庭にお金がないから進学したいけどできない」ではなく、「家庭にお金がなくても、学びたいことがあるから給付型奨学金を使って進学する」のようなイメージです。言い方を変えれば、「Aできないから諦める」ではなく「AできないけどBを使って諦めない」そんな沖縄を実現していきたいです。