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「おじぃおばぁの笑顔のために」大見謝望さん <私たちのSDGs GSCOメンバー紹介 7 >


「おじぃおばぁの笑顔のために」大見謝望さん <私たちのSDGs GSCOメンバー紹介 7 >
この記事を書いた人 琉球新報社

大見謝 望 – Nozomu Omija – 沖縄県立宮古病院/任意団体NPO GlocaLand

沖縄県出身。琉球大学卒業し、県立宮古病院に研修医として勤務。高校時代に様々な課外活動やディベートなどに取り組み、社会問題に関心を持った。大学時代は地域医療に興味を持ち、サークル活動なども通して県内離島や北部地域を訪れ、住民生活や医療の現状に触れた。新型コロナ禍になり、離島医療をより良くするための活動基盤として任意団体NPO GlocaLandの設立・運営に携わる。現在は、訪問診療や総合診療を学ぶため、宮古島で修業中。

 ―問題意識を持つきっかけを教えください。

 おじぃおばぁが最期の時に過ごしたい場所を選べない現状があります。私が中学生の頃に、その問題の一端を感じました。私の曾祖母は、元気に田舎で一人暮らしをしていましたが、90歳過ぎて病院の受診も増えてきました。身の回りの事を自分でできますが、高齢で一人暮らしを続けているのは周囲の家族にとっては心配で、毎日誰かが家に行くことも難しいので、話し合って老人ホームに入所することになりました。

 面会の時に、毎日見てくれる人がいる環境ですが、今まで家で料理もしていた住み慣れた家での生活から離れることになった様子を見て、もし家に居ても利用できる医療・福祉的なサービスが整っていれば、家で過ごすことができたのではないかと感じました。

 大学に進学し、在宅医療の資源がまだまだ充実していない沖縄の現状を知りました。例えば離島では、介護が必要になった高齢者が島に残りたくても、やむを得ず島を出なければならない事があります。一方で、田舎でも在宅医療や介護・福祉サービス、周囲の家族の協力があれば、家でお看取りもできると知りました。おじぃおばぁの暮らしを最期まで支えられる環境を作りたいと思うようになりました。 

 ―現在はどのようなことに取り組んでいますか。

 私は将来、在宅医療に携わるため、大学を卒業し、現在は宮古島で研修医として働いています。宮古島は離島でありながら、在宅医療が比較的充実している地域です。医師としての知識と技術を身につけるとともに、地域に根差した医療の実践に取り組んでいます。

 また、全国の離島・へき地医療に関心のある学生・若者が集い、離島の医療や暮らしをより良くするための活動基盤として設立した任意団体NPO GlocaLandの取り組みに関わっています。医療従事者の都市部への偏在や島の限られた資源、地理的特殊性に着目して、上流に潜む社会的決定要因(SDH; Social Determinants of Health)に多角的な視点からアプローチして、離島医療の課題解決のために活動しております。今後も、将来の沖縄の暮らし・健康をより良くするために取り組んでいきたいです。 

 ―どのような沖縄にしていきたいと考えていますか。

 これまで沖縄で頑張ってきたおじぃおばぁが、いつまでも笑顔で暮らせる沖縄になってほしいです。全国でも有数の島嶼地域である地理的な特徴や伝統文化、地上戦を経験して本土復帰をした歴史など、沖縄には独特なバックグラウンドが多くあります。今の沖縄を作り上げてきたおじぃおばぁはもちろん、生まれ育った私たち若者にとって、沖縄へ愛着があるのではないかと思います。

 家族や親戚どうしの繋がりや地域との関わりの強い慣習がある沖縄だからこそ、年をとっても住みたい場所で暮らし、支え合える社会が実現できるはずです。沖縄のどの地域でも、いつまでも笑顔で暮らせることは、高齢者だけではなく、若者やこれから生まれてくる子ども達にとっても幸せな未来だと思います。私は医療・福祉の面から、そんな沖縄の実現の一助になりたいです。