両親の笑い声を聞いた日 手話コメディー劇団を立ち上げた<大屋あゆみさん>の夢◇沖縄芸人ナビFILE.18

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人気お笑いトリオ「初恋クロマニヨン」の松田正(まつだ・しょう)さんがナビゲーターとなり、「県内のお笑い三事務所(FEC・オリジン・よしもと沖縄)を訪問! 今回は県内では数少ない女性芸人の大屋あゆみさんに話を聞きました。手話でコメディーを演じる「劇団アラマンダ」の座長も務めるあゆみさん。松田さんは彼女の最近の活躍に注目しているそうです。
(執筆:フリーライター・饒波貴子)


「沖縄芸人ナビ」は「週刊レキオ」(毎週木曜発行)とも連動。毎月第1週目のレキオで取材の裏話などの関連記事が読めます。レキオもぜひご覧ください。




大屋あゆみさん(左)とナビ芸人の松田正さんは、どちらもよしもとエンタテインメント沖縄所属。(http://yoshimoto-entertainment-okinawa.jp/)。よしもとの養成所・NSC沖縄1期生で、年齢も一緒の2人。写真では手話で「I LOVE YOU(愛しています)」と表現。


裏方志望から劇団座長に



松田ナビ:大屋とはよしもと沖縄の同期で長く一緒にお笑いをやっていますが、「劇団アラマンダ」の活動について教えてください。

あゆみ:聴覚に障がいがある人にも楽しんでもらえる、手話コメディーをやっています。でも聞こえる人も一緒に楽しんでもらえるように、という思いで立ち上げた劇団です。

松田ナビ:手話通訳の人も舞台に立ちますか?

あゆみ:立ちます! しかも横で通訳するだけではなく、舞台設定の一部も担っていただいています。顔に太陽のパネルをつけたり、ガジュマルとかシーサーになっていただいたり。私たちも通訳の方をいじっていますし、芸人より笑いを取っていますよ(笑)。県内トップレベルの通訳士なので、あのすごい方が舞台でこんなことするの!? って最初に笑いがうまれます。


2019年10月に沖縄で開催された「第49回全国ろうあ女性集会」で講演。

松田ナビ:舞台ではコメディーのほかゲームもしたりすると聞きます。他にもバリエーションは?

あゆみ:11月から手話講座も始めました。通訳士にアシスタントとなってもらい、お客さんと芸人が一緒に手話を学んでいく講座です。最後はゲームで締めて、劇団員全員参加しています。

松田ナビ:反応はどうですか?

あゆみ:皆さん正直な方が多く、舞台の感想もめっちゃハッキリ言われます。こんなオチは伝わらないんだな〜とかみんなで手探りしています。芸人と触れ合える手話講座は、楽しく学べると好評ですよ。

松田ナビ:「アラマンダ」の旗揚げのきっかけは?

あゆみ:お笑いをやる前、私は役所の福祉課で手話担当として働いていました。養成所のNSC沖縄には、スタッフを目指して制作コースに入ったんですけど、勧められて芸人に。いつかお笑いと手話を絡めたいと話していましたが、ずっと方法が分からなかったんです。でも「おきなわ新喜劇」の台湾公演に出演した時、言葉が通じなくてもアクションでこんなに笑いがとれるんだと実感して。ズッコケたりなどしたら笑ってくれて、衝撃でした。その余韻がずっと残っていた2017年11月、沖縄県「手で話そう運動」のイベントで呼ばれ、役所時代の仲間に再会しました。その時に3月の「耳の日大会」という福祉イベントの相談を受け、よしもと沖縄の仲間と一緒に聴覚障がい者の方の前でネタを披露する事が決まったんです。私はネタに手話を取り入れ、他のメンバーは前もって台本を提出し通訳士が手話で漫才を訳してくれました。

お客さんのほとんどが聴覚障がいがある方でしたが、皆さんすごく喜んでくださいました。たまたま同じ週に全国区の賞レース「R-1ぐらんぷり」があり、濵田祐太郎さんが優勝しました。濵田さんは視覚に障がいがある方で、福祉を意識したお笑いの需要があるかもしれない。台湾公演でも実感したし・・・とすべてがつながり、2018年に劇団を立ち上げてみたいと思いました。


「おきなわ新喜劇」スリムクラブ班にレギュラーで出演(2015年)。

松田ナビ:明確なタイミングがあった! 手話で笑いが来るのは、どんな感覚だろう!? とても不思議です。

あゆみ:言葉のボケは伝わらないから、動きを見てダイレクトに笑う。でも聴覚障がいがある方の中には独自の文化を取り入れている方もいて、外国の人に近いと思う。笑いのツボが違うと思うので常に手探り状態。

松田ナビ:試行錯誤しながらだね。そもそも、手話はどうしてできるように?

あゆみ:両親に聴覚障がいがあるので、私は日本語より先に手話を覚えたんです。だから家でもずっと手話でした。

松田ナビ:お笑いを始めた時のご両親の反応は?

あゆみ:全然ダメでめっちゃ反対されました! お母さんは今でも「辞めなさい」という感じだけど、アラマンダの公演が終わると一週間は何も言わない(笑)。良い舞台だと思ってくれているんじゃないかな。お父さんは応援してくれます。



松田ナビ:子どもの時から習得した技術をお笑いに生かしていて、うれしく思うはずよ。見た目が派手になっていってるのは何も言われない(笑)!?

あゆみ:で〜じ(とっても)言われてる(笑)。お母さんは太ってるのもいやだと言うし、髪も黒くしなさい、年考えなさい、とかいろいろ。

松田ナビ:でも手話で両親にお笑いを見せられるようになったのは、素晴らしい事だと思う。

あゆみ:親が爆笑している姿を見る機会、あんまりないさ。でも客席にいる親の笑い声が分かるんだよね。

松田ナビ:僕はライブに来た母親が爆笑しているの見た事ないし、親父が賞レースを観覧したけど「二度と行かない、緊張感が耐えられない」って言ってた。やっぱり親は心配なんだよな(笑)。

あゆみ:客席から親の声が聞こえるのはうれしいです。手話コメディーをやる前は、私がやっているネタの内容が聞こえないから意味が分からず、ライブに来る事はなかったので。

松田ナビ:劇団アラマンダが、両親が娘のお笑いを見るきっかけになったんですね。

コメディー女優になりたい!



松田ナビ: 大屋と僕は35歳で同じ年。最近おばさんネタが多くなってきたように思うけど、年齢的にもやりやすくなってきた(笑)!?

あゆみ:やりやすいのもあるし、そもそもお笑いが分かってないので「逃げ」かもしれない。難しいです。

松田ナビ:お笑いは本当に難しい。漫才やコントを突き詰める事も大事だけれど、今のお笑いはできる事を生かすという多様化に流れる風潮がある。大屋はキャラクターもあり手話もできていいと思う!



あゆみ:お笑いは苦手だけど舞台が好きです。劇団四季、TSJ(チーム スポット ジャンブル)の舞台を見に行ったり、吉本新喜劇は昔から見ていました。ガレッジセールさんが座長の「おきなわ新喜劇」に出た経験もあるので、今の目標は、誰もが認めるコメディー女優です。

松田ナビ:それが合っている感じがする。お笑い始めたころは不安定な面があったように思うけれど、最近は吹っ切れたというか迷いがなさそう。何かきっかけは?

あゆみ:やっぱり劇団アラマンダを立ち上げた事かも。不安しかなかった自分が、「見つけた!」という感覚になりました。裏方希望で養成所に入ったし、賞レースで頑張るタイプでもない。自分はどうなんだと考えた時、新喜劇を演じているのは楽しいと気付きコメディーかなと思った。お笑いを始めたころは辞めたいとしか思っていなかったけれど、今はできる事は全力でやりたいと考えるようになりました。

松田ナビ:気付けた事は大きいと思う。できない事は無理してまではやらないし、できる事を突き詰めるのはいい。芸人さんになるつもりはないのにお笑い界の門を叩いたのは、どうして?

あゆみ:小さいころから芸人さんはカッコいい、すごいと思っていたけれどなりたいとは思わなかった。でも学芸会で人前に出たり目立つ事が好きだったので、タレントに憧れていました。SMAPさんのファンだったので、どうやったら会えるんだろう・・・テレビに出られるようになれば会えるんじゃないかと思って。ちょうどその頃によしもと養成所の生徒募集のCMをテレビで見て「ここに行けば自分を変えられるかも」という気持ちになり、制作コースに入りました。テレビに出る人を支える事は、得意だろうと思えたんです。

松田ナビ:お芝居が好きな大屋の理想は?

あゆみ:大阪といえば吉本新喜劇、沖縄といえば劇団アラマンダになるくらい、定着させるように頑張りたい!


「劇団アラマンダ」メンバーと記念撮影。

手話ができるのは両親のおかげ



松田ナビ:劇団員は仲の良いメンバーが揃っているように思うけど、悩みはありますか?

あゆみ:劇団に対するモチベーションなど、みんなが正直に話してくれたらいいなと思います。それぞれ芸人としての目標があるはずだから辞めたいと思ったら言ってほしいし、みんなの夢を応援したい。劇団アラマンダのプロジェクトは、手話を覚えるなど時間がかかり結構キツイ。ギャラの期待もまだできません。優しいから何も言わないメンバーが多いので、何かあれば言ってほしい。私は絶対成功する気持ちで頑張りますが、もしついて行けないなど思ったら話してほしいです。けんかになりそうなくらい、言ってくるメンバーもいるけどね(笑)。

松田ナビ:ネタ合わせを勝手に見て意見を言って来る人いますね(笑)。でも的確だったりするし、言われるとありがたく思うの!?

あゆみ:もちろん言ってほしい! みんながどう思っているのか気になるし、腹を割って話した方が劇団のためにも、メンバーのためにも絶対いいから。まとめて行くのは大変ですけどね。

松田ナビ:ちゃんと座長さんしてる! 僕だったら絶対無理だし、トリオでめちゃくちゃ労力使ってる(笑)。でもやりたい事をやっている大屋は、座長というポジションに合っていると思う。

あゆみ:う〜ん、どうなんだろう・・・悩んでいますけどね。メンバーは基本私が声をかけて決めました。ろうあ者の方から好評いただいたので、自分の感覚は間違っていないと確信しました。

松田ナビ:なるほど。台本はどうしているの?

あゆみ:キャンヒロユキさんはじめ放送作家の方にお願いしていて、いろんな人に書いていただきたいと思っています。私は書けないから、こういうのやりたいってリクエストする。このボケはろうあ者向けじゃないと思ったら、削ってほしいと伝える時もあります。

松田ナビ:それはもう専門職だ。大屋が演出していく必要があると思うし、座長の存在感もある。ところで、劇団名の由来は? 

あゆみ:沖縄に咲く黄色い花。おじいちゃんの家に親戚が集まる盆や正月に、庭に出てよく歌っていました。4〜5歳のころだったはずだけど、多分それが私の初舞台。人がいっぱいいるのがうれしくて、10数人の親戚の前で歌っていたんだけど、庭にアラマンダの花がたくさん咲いていました。おじいちゃんがいるからお父さんが生まれて、お父さんがいるから私がいる。両親の娘でなければ手話もできなかった、という感謝の気持ちを込めて劇団名にしました。


鮮やかな黄色が美しいアラマンダの花と。

松田ナビ:名前を考えたら、子どものころの風景が浮かんできたって事?

あゆみ:実は後付けだったりするけどね(笑)。「沖縄の花」をキーワードに調べてみたらアラマンダが出てきて、オジーの家に咲いてたからこれがいい、響きも面白いと思えて決めました。

松田ナビ:手話が使える大屋は単に技術があるだけでなく、35年間の生きざまも劇団の活動を通して出していくと思う。お客さんにはアラマンダが咲く庭で歌う昔の景色は見えないけれど、どこかでにじみ出ると思うよ。台本ありきのカッコつける漫才など、柄にもないキャラを演じるのはウケないんじゃないかと今の僕は思っている。本来の自分が生きてきたバックボーンをぶつけるところに大屋はたどり着いたから、きっとお笑い的にも強くなっている! 最近はテレビのレポーターなども、ナチュラルにやっているなと感じます。

あゆみ:レポーターは難しいけど楽しい! 目の前に人があんまりいなくて、カメラのレンズを見ればいいからかな。舞台の前に人がいっぱいいたらやっぱり緊張する(笑)。

松田ナビ:金髪など、見た目を派手にしたきっかけは? 前は役場で働いている地味目なお姉さんというイメージで、キャラクターがガラッと変わりました。

あゆみ:美容師さんのおかげ(笑)。芸人になりたての時は、女優でもないしきれいにする必要はないと思い化粧もしていなかったんだけど、ゴリさんが「テレビに出る人は身だしなみをちゃんとしないと」と話しているのを聞いてハッとし、服装や化粧を気にするようになりました。美容室にも通い美容師さんに話したら、「イメージつけましょう」と言ってくれて金髪に。イメージが定着するまでこのまま、ってなったんです。

松田ナビ:極端だけど、ありがたいアドバイザーに出会えて良かったな(笑)。確かにそのあたりからキャラクターができ始め明らかに変わった。道が見え始めてきたとはうらやましいぜ(笑)!

あゆみ:金髪にして運気が上がった気がするんです。ノートに書いている目標は、売れたら髪を黒くする! 美容師さんや知り合いに、私の髪の毛が黒くなったら成功して食べていけていると思ってと伝えてあります(笑)。傷みすぎてケアが大変という面もあるし、早く黒くしたい(笑)。

松田ナビ:大屋あゆみの髪が黒くなったら、収入が上がったサイン(笑)。いろんな道が見えて来ている大屋のそばにいると、楽しくなります。最後に今後の目標を。

あゆみ:沖縄を拠点にしながら全国公演を行うのが、劇団アラマンダの目標です。全国の人が知ってくれるよう知名度を上げられるように頑張ります。芸人としてはずっと続ける事。辞めようと思った数年前、「おきなわ新喜劇」の出演オファーが来て転機だと思いました。その後、手話を披露する機会が来て、新しい道が見えた。その時々のタイミングがいつもあるので、自分はラッキーだから頑張りたいと思えます。劇団アラマンダを立ち上げた今、本当に楽しいです!

松田ナビ:何らかの道しるべが常にある大屋。外から見ていても変わったなと分かります。お互い頑張っていきましょう!





【対談を終えて・・・】

☆あゆみさん☆
なんだか緊張しました。同期でありながら、松田さんは先輩イメージなんです。今回話せる機会ができてうれしかったですし、お笑いに対する今の思いを知り「そんなこと考えているんだ!」と意外に感じました。

☆松田ナビ☆
カッコつけず自分をさらけ出してお笑いができる人はすごい! 生きざまを出している大屋はうらやましいですし、すごいと思える1人です。7年前は弱々しかったですが、たくましい芸人さんになっていますね。




【プロフィール】


★大屋あゆみ

生年月日:1984年10月5日
出身地:宜野湾市
趣味・特技:食堂巡り、カラオケ、手話ができる
Twitter:@oyayafmbayu

★松田 正(まつだ しょう)/初恋クロマニヨン

生年月日:1984年8月22日
出身地:読谷村 
趣味:ソフトボール/漫画
特技:野球
Twitter:@hatsukoimatsuda
 




【インフォメーション】


◆劇団アラマンダメンバーと学ぶ楽しい手話講座

日時:1月9日(木)・23日(木) 19:15開場/19:30開演
料金:前売り・当日ともに500円
出演:講師=大嶺文子、アシスタント=大屋あゆみ、劇団アラマンダメンバー
内容:初心者OK! 芸人と一緒に楽しく手話に触れる60分の講座です。
会場・お問い合わせ:【よしもと沖縄花月】
那覇市前島3-25-5 とまりんアネックスビル2階 (マップはこちら
☎ 098-943-6244
公式サイト==> http://www.yoshimoto.co.jp/okinawakagetsu/
 


 


◆よしもと沖縄花月フライデーナイトライブ(YOFライブ)
 ガチンコネタバトル 「よしもと-Uchinah-ランキング」

日時:1月17日(金)19:15開場/19:30開演
料金:前売り・当日ともに1000円 
ゲスト:大自然
内容:よしもと沖縄芸人全組出演!お客様の投票でランキングが決定します!
会場・お問い合わせ:【よしもと沖縄花月】
那覇市前島3-25-5 とまりんアネックスビル2階 (マップはこちら
☎︎ 098-943-6244
公式サイト==> http://www.yoshimoto.co.jp/okinawakagetsu/



執筆:饒波貴子(フリーライター)

ライタープロフィル
饒波貴子(のは・たかこ)
那覇市出身・在住のフリーライター。学校卒業後OL生活を続けていたが2005年、子どものころから親しんでいた中華芸能関連の記事執筆の依頼を機に、ライターに転身。週刊レキオ編集室勤務などを経て、現在はエンタメ専門ライターを目指し修行中。ライブで見るお笑い・演劇・音楽の楽しさを、多くの人に紹介したい。



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