10年に一度の花が東南植物楽園で開花中!【島ネタCHOSA班】


社会
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今、沖縄市の東南植物楽園で10年に一度しか咲かない「皇帝アナナス」という植物の花が咲いているそうですね。いったいどんな植物なのか詳しく調べてもらえませんか?  

(那覇市 植物好き50代)

「皇帝アナナス」って植物の名前なんですね。何だかすごそうですが、どんな植物なんでしょうか?

東南植物楽園へ

これが皇帝アナナス。厚い葉に覆われた株の中央から、高さ1.5㍍ほどの赤い花茎が天に向かって伸びています。皇帝の名にふさわしい堂々たる姿=5月27日、沖縄市知花の東南植物楽園

というわけで、沖縄市知花の東南植物楽園にやってきた調査員。同園は、コロナウイルス感染拡大の影響で4月中旬から臨時休園が続いていましたが、緊急事態宣言の解除を受け、5月23日から開園となっています。

仲井間歩さん

出迎えてくれたのはガイドの仲井間歩さん。さっそく皇帝アナナスがある「水上楽園 めぐりあいの湖」のそばに案内してもらいました。

「見えてきました。あれが皇帝アナナスです」。仲井間さんが指差した先を見ると…。遠目からでも分かるユニークな植物が生えているではありませんか!

皇帝アナナスはパイナップル科。パイナップルの葉のような肉厚の葉に覆われた株の真ん中から、1・5㍍ほどの長~い花茎が空に向かって伸びています。全体の高さは2~3㍍以上になるでしょうか。調査員も、こんな植物はこれまで見たことがありません。
 

珍しいこと尽くし

いったいどんな植物なのか詳しく聞いてみると…。皇帝アナナスはブラジル固有の植物で、現地では標高1200~2000㍍の高山の岩壁に生育しています。肉厚の葉の間に水をたくわえることができ、過酷な環境を生き抜くたくましい植物です。「皇帝」の名はある皇帝に献上されたことに由来するそうですが、堂々と空に向かって伸びる花茎を見ていると、いかにも皇帝の名にふさわしい気がしてきます。

国内でも栽培例はありますが、一般的には温室で育てられており、屋外で見られるのはたいへん珍しいとのこと。開花までにはなんと10年を要し、花もめったに見ることができません。

「皇帝アナナスには赤葉と緑葉があるのですが、当園のものは赤葉。赤葉の皇帝アナナスに花が咲くのは珍しいといわれています」。ただでさえめったに見られないのに、さらに貴重なのですね!

数カ月前から開花の予兆があり、今年の4月に開花に向けて花茎が伸びていることがはっきり確認されたそう。

「花茎は驚くほどのスピードでぐんぐんと伸びていき、5月23日の再開園日に合わせて花が咲いたんです。私たちの話を聞いてタイミングを合わせてくれたんじゃないですかね」と仲井間さんは笑います。

花は、花茎から伸びる花序(かじょ)と呼ばれる部分から咲きます。一つ一つの花は数日でしおれてしまいますが、多数の花序が確認できており、下のほうから徐々に花を咲かせているので、6月中は花を楽しめるのではないか、とのこと。

「花に栄養をすべて渡してしまうので、開花後は残念ながら枯れてしまうんです。当園はコロナウイルス対策を行ったうえで営業していますので、ぜひ今のうちに見に来ていただきたいですね」

花茎が伸びていく様子を写真で記録し、動画で公開する準備も進めているそうなので、興味がある人はホームページもチェックを。

花茎から伸びる多数の花序から花が咲きます。一つの花は数日でしおれますが、多数の花序が順番に開いていくため、6月中は花が鑑賞できる見込み

今回東南植物楽園を訪れたのは、梅雨の合間の一日。あいにくの曇り空でしたが、しっとりとうるおった園内は独特の情緒があります。「ハスやスイレンの開花時季も迎えていますし、園内の散策にはいい季節なんですよ」と仲井間さん。人間にとって梅雨は時にうっとおしく感じますが、植物にとっては雨がたっぷりでいい季節なのかもしれませんね。

皆さんも、ぜひ皇帝アナナスの貴重な花を目にしてみてはいかがでしょうか。

(2020年6月11日 週刊レキオ掲載)