やんばる発 自然と人をつなぐデザインー本村ひろみの時代のアイコン(31) 宮城かおり(グラフィックデザイナー)

  • 沖縄県全体
このエントリーをはてなブックマークに追加


名護市出身の宮城かおりさんは、やんばるを拠点に飲食店のロゴやチラシ、メニューなどのデザインをしている。彼女のデザインからはフワッとしたぬくもりが伝わってくる。デザインの色調も、どこか懐かしい、柔らかいトーンだ。彼女が生活している名護の集落は、窓を開けると川のせせらぎや滝から流れる水の音が聞こえ、深い緑に包まれている。朝6時に一斉にセミが鳴き始め、夕方6時にはきっちりと鳴きやむという、自然の知らせがある環境で彼女のデザイン感覚は培われている。「のどかな環境で一日を過ごしているんです」。そう話してくれた彼女の生活に興味が湧いた。



いつも早朝6時に起きて、身支度を整え、ちゃんとお化粧をしてから朝食の準備に取りかかるそうだ。朝7時半に子どもたちやご主人を車で送り、家に戻って午前9時から午後4時までは仕事の時間。仕事を終えたら家族を迎え、晩ご飯の準備などの家事を済ませ、夜8時にはみんなで夕食を楽しむ。その後、10時から深夜0時までは自分のための時間。デザインの本を眺めたりネットを見たり、のんびりとした時間を過ごすそうだ。主婦としてもグラフィックデザイナーとしても、バランス良くゆったりとしたペースで仕事をしている宮城さんだが、20代は仕事をバリバリこなすキャリアウーマンを目指し、会社員として忙しい日々を送っていたそうだ。今のような生活スタイルに方向を変えたその転機は何だったのか、尋ねてみた。

教師になる夢をかなえる途中で…

宮城さんは、目の前にあるものは何でも描いてしまうような、紙と鉛筆があれば一人でも楽しんでいられる子どもだった。父親が工業高校の教師だった影響で将来の夢は教師だったそうだ。高校時代は駅伝部の部長を務めるなど体力にも自信があり、沖縄国際大学文学部英文科へ進学した後は教員への道のりを歩み始めていた。だがその矢先、突然病に襲われた。大学3年の時に心臓の手術を受け、手術後は体調を整えるために一年間休学する事になった。自信があった体力は入院生活で次第に失われていった。そして授業を受ける体力もなくなり、学校に行けないことで気力も落ちた。教員免許を取得するための単位も諦め、ただ卒業だけでもできれば、という一心で大学を卒業した。就職活動も思うようにできず半ば諦めの気持ちがあったが、名護市がIT特区になったことで縁があったティーダワークスに就職した。入社してからはゲームのコンテンツの背景画を担当。英文科卒業の宮城さんは、就職してから現場でイラストの技術を学んだ。

ゆっくり、じっくり。心穏やかな生活から生まれるデザイン

7年間の在籍中、専門学校で技術者の進路指導をするゲスト講師も務めた。元々、教員を目指していた宮城さんにとって、学生に触れ合える専門学校での指導はやりがいがあった。その後、幼なじみの男性と職場結婚。子育てをしながら充実した日々を送っていた。しかし、キャリアーを積んでいく中で、体力が少しずつついていかなくなった。心臓の手術後、精神的にも不安が募っていたこともあり、30代に入り退職を決意。体力に合わせて仕事のペースを整えていった。

自分の身体に耳を傾けながら生活すると、人の話をゆっくりと聞けるようになった。デザインを磨き上げる思考の時間が増え、クライアントとのコミュニケーションの質も変わった。会社員の頃は、決められた日程の中でクライアントの指示書に従って作品を制作していたが、現在は、実際にお客さまの元に足を運び、デザインとは関係のないこともおしゃべりしながら一緒にデザインを作り上げるようになったそうだ。体調を崩した経験が「人と自然とデザインをつなぐ」仕事への転機となった。宮城さんは「すべてに感謝です」と笑顔で話した。

宮城かおりさんが自分のペースでスタートしたデザインの仕事をいくつかご紹介する。


「わわcafE」

オーナーご夫妻からデザインの依頼を受け、ロゴデザインを担当。二つのドットは藍染の色をイメージ。
http://www.ooobase.com



「しまドーナッツ」

ギフトボックスのシール、フライヤーデザインを担当。
コンセプトは“素材にこだわった大人から子どもまで安心して食べられるやさしいドーナッツ”
http://shimado.net/



「good morning 真喜屋」

ビジュアルデザイン、三つ折りのフライヤー担当。
北部に宿は増えてきたけれどおいしい朝ごはんは地産地消のこのカフェで!
https://www.instagram.com/goodmorning_makiya/?hl=ja



「ツール・ド・おきなわ」

2019デザイントートバッグをデザイン。
宮城さんは体力をつけるために一年前からロードバイクでサイクリングを始めた。ご夫婦で名護から辺戸岬まで往復100キロ近くのサイクリングをしたり、週末は本部半島一周をぐるりと回ったり、自転車に乗って見えてくる風景を楽しんでいる。



「はなぱんちゅん物語」(2020年5月)

名護市二見の「二見あかカラシナ」を特産品に、という思いを込めてデザイン。
はなぱんちゅんは「鼻にパーンと刺激がある」の意味。
https://wansaka-o.jp/tokusan/kakou/#processing



「カラキティー」

玄米ドリンクを出している(有)渡具知のカラキの葉が一枚入ったドリンク。「カラキ」はシナモンの仲間でニッキの原料。「オキナワニッケイ」と言われていて、やんばるに自生しているとても希少な植物 。チャイに合う香りと、ボトルに大きな葉が入った涼しげなデザイン。
http://www.ryukyuyakuzen.com/



「MOCCHI」

最新デザイン「MOCCHI」 移動パーラー・モッチ
キッチントラックの名刺、ロゴ、ステッカーデザインを制作。
今話題の韓国料理の移動パーラー。オーナーが好きな韓国アーティストのイメージが、ひよこから伝わるってくる。

2020年、コロナ禍の中、料飲店から「HPを作りたい」「webショップを開設したい」と仕事の相談が相次いでいる。デザインの仕事が増えたこのタイミングで、デザイン会社「tone design(トーン・デザイン)」を立ち上げた。「モノの良しあし(モノの価値)は自分で決める」をコンセプトに、Tone=音色、波長を表現するという意味を込めてこの名前にしたそうだ。宮城さんはこれからもデザインでやんばるのエネルギーを届けていく。



【宮城かおりプロフィール】


宮城かおり(みやぎ・かおり)

沖縄県名護市出身
教師の父と洋裁師の母の影響を強く受け、幼いころから絵やファッションに興味を持つ。
ティーダワークスで携帯ゲームの背景イラストを担当し、フォトショップの技術を学ぶ。出産を機に、沖縄の美しい自然に囲まれ、時間の流れをゆっくりと感じながら生活している。

【デザイン実績】
・わわcafE
・しまドーナッツ ・Good Morning 真喜屋
・ENTROsoup&tapas
・おきなわBee Happy
・Cinema day camp 
・ツール・ド・おきなわ (shippodesign)
※Shippodesign 名護出身オーストラリア在住のIzuさんとデザインの楽しさを広げる活動をしている。ツール・ド・おきなわにはトートバッグを制作して2018年より販売中。
・わんさか大浦パーク(はなぱんちゅん物語)
・GlassWorksちゅき ・有限会社渡具知
他ロゴやチラシ、グッズなどのグラフィックデザインを手掛ける。
2020年大浦区みらい総合計画ビジュアルブックのデザイン担当として活動予定

【問い合わせ】https://www.instagram.com/kao__miyagi/?hl=ja




【筆者プロフィール】


本村ひろみ

那覇市出身。清泉女子大学卒業、沖縄県立芸術大学造形芸術科修了。
ラジオやテレビのレポーターを経てラジオパーソナリティとして活躍。
現在、ラジオ沖縄で「ゴーゴーダウンタウン国際通り発」(月〜金曜日 18:25~18:30)、「 WE LOVE YUMING Ⅱ 」(日曜日 19時~20時)を放送中。




前の記事漫画・ハマとんど~「宇宙人と犬」
次の記事ため息が出るほど美しい… 琉球美...