「3世代先まで残る、愛着ある絵本を作りたい」ー本村ひろみの時代のアイコン(34) sava(えほんさっか)

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savaさんの名前は魚のサバに由来している。
3歳から始めた水泳のおかげで県大会に出場するほど泳ぎが得意になった。背泳ぎでプールを自由自在にスイスイと泳ぐ。そんな風に楽しく泳いでいる様はまるで魚のよう、ということで、友人たちからsavaと呼ばれるようになったそうだ。名刺のsavaの文字も魚のイラストでつづっている。はじけるような笑顔で学生時代の話をする彼女からは、心身ともに健康な明るいオーラがあふれていた。



沖縄との運命の出会いは“オキナワンロック”

savaさんは千葉県出身だ。両親が旅行好きで、週末はどこかに旅をするような家族だった。家族は両親に兄と姉。すぐ近くの隣町も、地図で眺める遠くの街も家族一緒に出掛ける高揚感…。末っ子のsavaさんは愛情に包まれながら幸せな旅をした。そして中学の頃までには47都道府県旅をして、小学5年生の時に初めて沖縄へ。石垣島を訪れたそうだ。当時見たきれいな海や美しい自然は、彼女にとって魅力的なものだった。しかしその後、それ以上に心奪われる“沖縄”が現れた。

それはコザの街の“オキナワンロック”だった。
4歳年上のお兄さんは大の音楽好きで、部屋にはたくさんのCDがあった。その中にコンディショングリーンやジョージ紫のCDがあった。これが沖縄との運命の出会い。savaさんはそれ以来、沖縄のロックに魅了され、その音楽のルーツが気になって高校生の頃に再び沖縄を訪れた。歌詞にあった沖縄の空気を味わいたくて、アルバイトでお金をためては沖縄へ通うようになった。その生き方もまさにロックだ。

“おきなわ愛”に目覚めたsavaさんは島の文化(民俗学)を学びたくて琉球大学へ進学した。美術にそれほど興味があったわけではなかったが、小学生向け美術教育の授業で「絵本を描く」という課題が出されたことがきっかけで、アートへの意欲が湧いた。もともと高校生の時にガールズバンドを組んで作詞作曲を担当していた彼女は、詞を書くのが好きで、それに絵を添える感覚で絵本を描いていた。それ以降、絵本を描くことに夢中になり、その人が主人公の絵本を作って友人に贈るようになった。savaさんはここからアートの道を歩み始める。



人の愛着によって残り続けるもの

大学の卒業制作は「風化と愛着」をテーマに「愛着標本」を制作した。当時、前島アートセンターでのお手伝いをきっかけに、地域の魅力をアートで表現している人たちに出会った。彼女も授業の課題の中で、商店街を題材に作品制作をしていくうちに、古い看板や洋服の中にあるデザインにひかれ、このテーマにたどり着いた。「商店街に残るもの、風化していくもの、さまざまある中で、人の愛着によって残るものもあるのではないか」。それは「消え去っていくものがある中で、大切なものは残り続ける」という、彼女が沖縄の生活の中で気付いたことでもあった。


卒業制作「愛着標本」

授業の課題で制作した絵本「光の木」。初めて自分の気持ちを絵本で表した

社会問題を表現するのに絵本が描きやすいと感じた、2作目の絵本「柵の中のトリイ」

卒業後、いったん地元の千葉に戻った時、改めて「絵本作家になる」と決意。自分に課題を出し、絵のレッスンもかねて毎日一つを投稿する「いちにちいっこ」というブログをスタート。こつこつとやり続けることで、一年で400枚以上の作品を投稿し、その中で自分の好みの画材や画風も分かっていった。



フリーランスとして声が掛かる“120%の魔法”

商店街での“古き良きもの”との出会いから沖縄に戻ってきたsavaさんは、沖縄市の銀天街商店街のリブランドに関わることになる。銀天街で“街おこし”の活動をしていた日々は、高校生の頃、憧れて聞いていたオキナワンロックの歌詞を思い起こさせる日々だった。そして銀天街での3年間はsavaさんにとって実り多いものだった。地域とのつながりやたくさんの出会いがあり、そこでタウン誌やポスター制作などデザインを学ぶことができた。


銀天街に住んでいた時のアトリエ&ビル「カネボウヒロバ」

手掛けた仕事は多岐にわたる。沖縄市の沖縄こどもの国のワンダーミュージアム空間デザインや産婦人科の待合室の空間デザインも担当。次々と仕事の声がかかった。


沖縄こどもの国のワンダーミュージアムの空間デザイン

産婦人科の待合室

県内の新聞副読誌での連載も決まった。沖縄全島の民話を題材にした「あこなわ歩紀(あるき)」は2年間で24カ所を取材し、savaさんならではの創作物語に仕立てた。絵本の仕事が続き、ホテルムーンビーチからの依頼でホテルオリジナルの絵本「ぼくらのムーンビーチ」を制作。2017年には小学館から『小学1年生』の付録冊子としてsavaさんの「アコークローのまほう」が全国の子どもたちに読んでもらえることになった。


「ぼくらのムーンビーチ」

「アコークローのまほう」

「与えられた仕事を120%やっていると声が掛かる魔法があるんです。それで、フリーランスでやっていこうと決意しました」とsavaさんは明るく笑った。大変なこともあったはずだけれど、それもすべて認めて前に進む。それが彼女の魅力だ。

2020年は大きな仕事が完成した。ゆいレール新駅「石嶺駅」「経塚駅」「浦添前田駅」「てだこ浦西駅」の4つの駅のアートガラスのデザインを担当した。旅先の風景として思い出に残ってほしい、と沖縄の伝統と行事をテーマに描いた作品がモノレール駅で見ることができる。旅好きの両親も喜んで作品を見に駆けつけてくれたそうだ。savaさんの絵本作家の旅はこれからも続く。


ゆいレール・てだこ浦西駅のアートガラス



【sava(サバ)プロフィール】


sava(サバ)

千葉県出身。高校時代に聴いたコザのオキナワンロックをきっかけに、沖縄の文化人類学、琉球史に興味を持ち、琉球大学教育学部生涯教育課程島嶼文化教育コースへ入学する。
大学卒業後、3年間の沖縄市地域おこし協力隊の活動を経て、絵本作家に。
地域と子どもと歴史をつなぐ絵本の創作、造形ワークショップ・美術教室主宰の活動の他に、キャンバスから飛び出した絵本の表現を日々研究。これまで、歌、空間、演劇、身体表現と絵本のコラボ作品を発表した。
現在は、中学校の美術教諭として勤務。義務教育の中でのアートの可能性を模索中。また2021年の夏には個展の予定。詳しくはサイトをチェック!

2015-2017年 沖縄タイムス副読紙「週刊ほ〜むぷらざ」にて「あこなわ歩紀」連載
2016、2018、2019年 沖展グラフィック部門奨励賞 準会員
2017年 ホテルムーンビーチ 絵本「ぼくらのムーンビーチ」出版
     小学館小学一年生付録 絵本「アコークローのまほう」出版
2018年 絵本「ちむどんどんおきなわ」出版
2019年 ゆいレール延長新4駅のアートガラスのデザイン
2019年 ホテル日航アリビラ25周年記念 絵本「ニライカナイのアリビー」出版

【ホームページ】 https://www.chocogorillaoffice.com/
【Instagram】 https://www.instagram.com/sava_okinawa/?hl=ja
【チョコゴリラさんのアカウント】
 
“チョコゴリラさん”は自分をキャラクター化して日常を描いている作品
 https://www.instagram.com/chocogorillasan/?hl=ja
【美術の先生が作った作品展WEB2020】
 https://www.bijutu.net/web2020/?fbclid=IwAR3liNYq8Yxu66sS-ZdzelwwDlINg0MC6CzUvi4eNpo-p4d1bCHI1URp4tA




【筆者プロフィール】


本村ひろみ

那覇市出身。清泉女子大学卒業、沖縄県立芸術大学造形芸術科修了。
ラジオやテレビのレポーターを経てラジオパーソナリティとして活躍。
現在、ラジオ沖縄で「ゴーゴーダウンタウン国際通り発」(月〜金曜日 18:25~18:30)、「 WE LOVE YUMING Ⅱ 」(日曜日 19時~20時)を放送中。



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