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この秋してみたいことは?かなえたいことや好きなことに挑戦してみよう! 100cmの視界から―あまはいくまはい―(81)


この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報社

今から約25年前、私が中学2年生の夏休み、姉が住んでいた東京に遊びに行った時のことです。新宿駅の目の前に大きなデパートが建設中で、オープンは秋。その建物の大きさに心を奪われ、開店したら「絶対に行きたい!」と思いました。沖縄に帰ってもその光景が頭から離れません。どうしたら東京にまた行くことができるか、と考えた私が思いついたのが、英語スピーチコンテストの全国大会に出ることでした。でもそのためには予選を勝ち抜かなければいけません。デパートのことを思いながら、練習を重ねました。その思いがかない、地区大会、県大会を勝ち抜き、秋に開催される全国大会に行けることになったのです。

大会の前日に東京入りし、真っ先に向かったのはもちろん開店したばかりのデパート。高層階のレストランフロアにある、台湾小籠包が有名な中華料理店を姉に予約してもらい、一緒にランチをしました。高い窓から見渡す新宿の景色は壮大で、新宿御苑の紅葉がきれいでした。念願のデパートに行けたことだけが本当にうれしかったです。25年たった今でも、新宿でそのデパートを目にするたび、小籠包が食べたくなり、当時を思い出して懐かしくなります。

スピーチコンテストで入賞し、米国に招待されました

小さなこと、突拍子もないことに熱中する子どもを見て、「そんなことなんてどうでもよくない?」「効率よくさっさとやるべきことを終わらせたら?」「そんな夢を描いても現実的には無理だよ」、そう言いたくなる気持ちをぐっと我慢します。だって私はその英語スピーチコンテストで全国出場できただけでなく、入賞し賞金と米カリフォルニアでのキャンプ参加まで手に入れたからです。

得意なことを生かすマッチングとタイミングがよくて、たまたまうまくいってラッキーでしたが、人生はきっと計算できない、予想不可能なことがちりばめられているのです。不純な動機でも、「やりたい!」と思ったことをすることで、形になること、得られるものがあると信じています。だからこそ好きなことに熱中したり、新しいことに挑戦したりする人にはエールを送りたいです。不純な動機に見えたとしても。

食欲の秋、スポーツの秋、読書の秋、今年はコロナ禍で例年とは違った過ごし方になりますが、やりたいことに挑戦してみませんか? ほんの小さなやる気が、大きな成果につながるかもしれません。残念な結果になったとしても、学びは得られるはず。ワクワクする気持ちで免疫力をアップさせて、この季節を乗り切りましょう!

(次回は9月29日)

伊是名夏子

いぜな・なつこ 1982年那覇市生まれ。コラムニスト。骨形成不全症のため車いすで生活しながら2人の子育てに奮闘中。現在は神奈川県在住。

 

(2020年9月15日 琉球新報掲載)