新年度に急増するモヤモヤの正体…人間関係の悩みにキャリアコンサルタンとがお答えします!【持続可能な働き方を求めて@沖縄】


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新年度。1年の間で最も出会いの多い季節がやってきましたね。
4月も過ぎてもうすぐ5月というところですが、みなさまはどのような人と出会いましたか。
私は、普段人材開発コンサルタントとして企業研修を担当させていただくことが多いのですが、4月はまさに新入社員研修や新任研修のラッシュでパタパタする日々を過ごしています。

【執筆者プロフィール】

福島知加 (ふくしまちか) ワダチラボ 代表

営業、人事、キャリアコーチの経験を経て2017年に独立。
現在は「コミュニケーションで個人と組織をHAPPYに」を指針に企業や大学生向けにカウンセリング、研修講師を務めている。
趣味は自己分析、ジャニーズを応援すること、泡盛をたしなむこと。
1984年中城村生まれ。

人間関係の悩みが8割

そのようなな中、ありがたいことに多くの個別質問をいただく機会があるのですが、どのような質問が多いと思いますか?

言葉遣いや電話応対など、スキルの質問?
と思われる方も多いと思います。
…実は、人間関係に関する質問が8割占めるのです。

「苦手な人とどうやったら仲良くなれますか」
「職場内に威圧的な人がいてこわくて話せません」
「苦手な人と距離をとりたいのですがどうしたらいいですか」

こんな感じで、研修の休憩中や終了後に勇気を振り絞って質問してくれます。

世界累計475万部のベストセラー「嫌われる勇気」の作者であり、心理業界の革命家であるアルフレッド・アドラーもこう断言しています。
「すべての悩みは対人関係の悩みである」

では、どうやったら苦手な人と仲良くなれるのか。

誰もが一度はこの問いをしたのではないでしょうか。

みんながこの悩みをもつということは、すぐに解決できる問題ではないということ。
でも、緩和できる方法はいくつかあり、その方法で解消されたということもあります。

ここで一つ例を出します。

ある企業で働くAさんは、いつも明るく、職場内でのコミュニケーションは円滑でしたが、早口で無表情で感情に波のある上司Bさんの前になると、途端に萎縮してしまい、普段の自分を出せません。
そのような中、上司Bさんとペアでプロジェクトを任されることになり、「失敗したら怒られるから絶対に失敗しないように」と注意していましたが、大きなミスをしてしまいました。上司Bさんには叱責されてしまい、落ち込んだAさん。職場内でのコミュニケーションすらままならない状態になってしまいました。

皆さんは、この出来事を見てどう感じますか。

Aさんの気持ち分かるな〜という方もいれば、
Bさんの気持ち分かるな〜という方もいらっしゃると思いますし
全く分からないという方もいらっしゃると思います。

まず、ここでお伝えしたいのは
当たり前ですが「人は思考の枠組みが異なる」ということ。

元々の気質、育った環境や教育、両親から言われてきたこと、経験してきたことが異なるので、捉え方、考え方、大切にしていること、行動が全く異なってくるんです。
それゆえに「苦手」と思う人も人によって異なります。

また、学生時代やプライベートに苦手な人がいたとしても、距離を置くなどして遠ざけることは自分のコントロールでできたと思いますが、
社会人になり、同じチームや組織、お客様にそのような人がいると、完全に距離を置くのは至難の業ですよね。

それで、私は毎回以下の3つのことをお伝えしています。

1、「他人と自分は違う人である」と認識を持つこと

2、相手の価値観を受け入れなくていいので、受け止めること

3、その上で、自分にできることに集中するということ
(今回お伝えする内容は、心理学等を用いて私の原体験やクライアントの話を交えながらお伝えしますが、人によって合う解決方法があると思うので、参考程度に聞いて頂けると嬉しいです)

それでは1から紹介していきます。

1、「他人は自分とは違う人」と認識する

まず1についてですが、冒頭でもお伝えしたように、人間は面白いほど思考の枠組みが異なります。
例えば「どこまでなら遅刻を許せますか」と聞いたところ、
ウチナータイムが当たり前の沖縄の中でも「絶対に許せない」と言う人もいれば
「2時間は余裕で待てるよ」と言う人もいます。
ちなみに「絶対に許せない」といった方は沖縄出身ですが新卒から10年東京で働いていたので、そう考えるようになったそうです。

私は自分と相手がどれだけ違う人なのかを知るためのツールとして
性格診断ツールの「エニアグラム」「DiSC」「MBTI」を用いて説明をしています。

どれも簡易的に無料診断できるサイトがありますので、試してみてもいいと思います。
そこで出た結果をみて、自分の特性と苦手だなと思う相手の特徴の傾向を見てみると、意外とこんなかわいいところもあるんだなと思えることもあります。

話は少し脱線しますが、私の研修ではコミュニケーションスキルにプラスして、
「エニアグラム」を使った研修を行うことがあるのですが、アンケートをとると
必ず「メンバーが信頼できるようになった」「苦手と思っていた人と仲良くなりたいと思った」という回答が多く返ってきます。

人は脳の性質上「分からないもの=危険」という防衛反応を起こしやすいと言われています。相手のことを理解できたときに「私のテリトリーに入れていい」と判断でき、
「仲良くなりたい」と思えるようになるんです。

みなさんも初対面も最悪だったけど、月日が経つと仲良くなったという経験があると思いますが、まさに上記の性質が反応しています。

2、相手の価値観を受け入れなくていいので、受け止めること

これは、相手の価値観をどうしても受け入れられない場合は受け入れなくてもOKということ。
価値観とは大切にしていること。すなわち、人によっては生命線みたいなところがあります。
それゆえに「相手の価値観も正しいし自分の価値観も正しい」と思って、相手の価値観に同感するのではなく「そうゆう価値観なのね」と受け止める程度でいいということです。
相手の価値観を受け入れて自分自身を崩してしまうという方もたまにいらっしゃいます。

管理職研修でこのことを話すと
「よく分かるんだけど、相手を変えないと仕事は回らないよー」
というお声をよくいただきます。

おっしゃる通りです。

仕事は目標があり、成果をあげていかないといけないので、変化や改善をしないといけないですよね。

その場合は
「価値観」を変えるのではなく「行動」や「仕組み」を変える
に焦点を当てるのではどうですか。とお伝えしています。

例えば、
「お前は本当にダメな人間だな」
と叱責されるのと
「〇〇さん、今回は納期に間に合わなかったね。次回の納期に間に合うように一緒に仕組みを考えようか」
であれば、どちらの人についていきたいと思いますか。

もちろん、人によって好みはあると思いますが、若手社員研修でこの質問をしたら、毎回約9割が後者の声がけをした人についていきたいと手を挙げます。

なので、
焦点を「人間性」「価値観」を否定するのではなく「行動」「仕組み」に焦点を当てると、今まで自己開示をしなかった部下や後輩が自己開示を始めるかもしれません。

そして最後に3です。

3、その上で、自分にできることに集中するということ

すでに1、2でも相手ではなく自分の行動や捉え方…つまり、自分のコントロールできることに焦点があたっています。

『嫌われる勇気』のアルフレッド・アドラーは
「過去と他人は変えられないが、未来と自分は変えられる」と提言しています。

私たちは無意識に「人を変えよう」と思ってしまい、それが時に自分を苦しめてしまいます。
でも、自分でコントロールできる「自分と未来」に焦点をあてて行動していると、ものすごく楽になったというお声を多くいただきます。

それに関連して、私が実践しているのが
苦手な人を頭の中で「バカ殿」「ドラえもん」仕様にすり替えて話をしてみること。
そうすると、その相手が不思議と可愛く見えてくる時があります。

これは成功者が実践しているNLP「神経言語プログラミング」を活用した
サブモダリティーチェンジを活用して実践しています。

ちなみに、みなさん少し気になっていたと思いますが、
冒頭でお伝えした部下Aと上司Bの話。これ実は私の体験談です。

私はこのことをきっかけにメンタル不調になってしまった過去があります。
なので、私からもう一度お伝えしたいことは「人は自分と違う人である」ということ。
だから相手を大切にするのはもちろんですが、自分自身の価値観や考えももっと大切にして欲しいです。

そして、実はこの話には続きがありまして。
この上司に当時の話を聞くと「そんなことを考えていたなんて気づかなかったー」
という反応でした。

もうズッコケですよw

当時はすごく悩みましたが、今ではその方の良い所も見えてきました。

そして、この経験をきっかけに行動心理学、脳科学、キャリア論を学び、キャリアコンサルタントになってこれまで2万人の支援に携わることができているのは、むしろ上司Bのおかげです。当時はものすごく苦しみましたが今では感謝の気持ちでいっぱいです。

最後に、
アルフレッド・アドラーは「過去と人は変えられないが、未来と自分は変えることができる」と提言していますが、私はこの経験を通して「過去の捉え方」なら変えられるのかもしれないと感じています。

「未来」は「今」の積み重ねで出来上がっています。
もし「過去」の何かに縛られていたり、人間関係に縛られていたりしたら
「どうなったら楽しくなるかな」「どうやったら自由になれるかな」と
質問してみてもいいかもしれません。

◆執筆者プロフィール◆
福島知加(ふくしまちか)ワダチラボ 代表
https://www.wadachilab.com/

「コミュニケーションで個人と組織をHAPPYに」をテーマに人材育成、キャリアカウンセリング、コーチング事業を展開し、年間で70社、約2000人の支援に携わっている。

自身が営業時代に全国最下位から全国1位を経験したことと、別の企業でメンタル不調を経験したことから、セルフコミュニケーションとリーダーのコミュニケーション重要性に気付き、自身の経験と心理学やビジネス・マネジメントスキルを用いて研修を実施している。

沖縄県産業振興公社登録専門家。沖縄県観光人材育成マッチングサイト「育人」認定講師。銀座コーチングスクール沖縄校運営。1984年中城村生まれ。