名護から始まる新しい街づくり 共創型コミュニティー・パークcoconova(ココノバ)


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自由なチャレンジの場所を提供

誰かのチャレンジを応援してさまざまな用途に合わせた場所を提供する名護市宮里のココノバ。発起人の北野勇樹さん(右)と館長の具志堅秀明さんは「大人から子どもまでみんなが関われるまちづくり」を目指す 写真・村山望

今、名護に全国各地から人々が集まる“公園”がある。名護市宮里の路地裏を少し入った場所にある「coconova(ココノバ)」だ。公園と言っても多くの人が想像する公園ではない。2階建ての開放的な建物にコワーキングスペース、カフェ、バーカウンター、ギャラリー、はたまた移動式サウナなど、地域の人々が「チャレンジしたいこと」を実践できる場が詰まった「地域共創型のコミュニティ・パーク」だ。

コンクリート打ちっぱなしの壁面に大きな窓たちから光が差し込む2階広場には、リノベーション時の廃材を利用して作ったという棚やテーブルが温かみを添える。全ての家具や設備は可動式で、やりたいことに合わせて自由に動かすことができる。外に持ち出して使うことも可能だ。

北野勇樹さん

ココノバには「これをするための場所」という決まりはなく、自由なチャレンジを受け入れる。フリーマーケット、音楽イベント、スタートアップ講習会、シニアファッションショー、シェア店舗など、地域の人々の自発的なチャレンジが多く実践されている。

ココノバを運営する株式会社Social Design(ソーシャルデザイン)の代表・北野勇樹さん(31)は世界一周やスタートアップなど豊富な経験をした上で「名護が世界最先端ですよ」と言い切る。

北野さんはこれまで、京都やタイなどでのゲストハウス事業やフィリピンでの教育実習受け入れ事業、日台韓での英会話学習事業など、自身も国境を越えてさまざまなチャレンジをしてきた。その後の紆余曲折を経て国内を旅する中で立ち寄った名護市に、なんとなく住み始めたのがココノバ誕生のきっかけだ。世界中でできた友人や名護で知り合った人々同士、緩やかにコミュニティーが形作られていった。

ココノバのコンセプトが可視化できるギャラリー展示

診療所をリノベ

名護市宮里の路地裏にココノバを作ったのは、偶然といえば偶然だった。

ある日、街を散策していた北野さんの目に、診療所跡の大きな建物と「貸」の文字が飛び込んできた。この建物を利用して面白いことができそうだと思い「『(この場所で)何かやろうよ』っていろんな人に写真を送りました」と北野さんは振り返る。診療所だった建物を仲間たちだけでリノベーションし、昨年12月にオープンした。

ココノバ外観。もともとは診療所だった(ココノバ提供)

新しい価値観

 「人と人との相乗効果」を促すことも、ココノバの目的だ。北野さんに共感して集まってきたメンバーの中に、衣食住を内部で完結させた独自コミュニティー「ワカゲノイタリ村」の„村長„として地元・名護で5年間活動してきた具志堅秀明さん(28)の姿もあった。「誰よりもよく名護のことを知っている」(北野さん)と白羽の矢が立ち、館長を任された。

 具志堅さんが「誰かがつながり合って力を合わせた火種が、最終的に町のあちこちで展開してもらえたらと思います」と話すように、ココノバが目指すものの一つに「民間から新たな街づくりの枠組みを作る」というものがある。

敷地内には移動式サウナも。たくさんの「楽しい」を実現している

 「まちづくりを行政に任せっきりにするのではなく、自分たちでできることはやっていきたいです。行政や政治家だけではなく、子どもから大人までみんなでまちづくりに関わっていきたいと思っています」と具志堅さん。

 「自由度の高い場所で、0から1がどんどん生まれてくれたら。行政とも連携していきたいです」と地元の明るい未来を描く。


北野さんは、自身が名護の魅力に取りつかれたように「ココノバが日本中、世界中から人が集まる場所になってほしい」と話す。

「名護はこれだけ自然が豊かで人口が増えていて、子どもが多くて人が温かくて。こんな場所は他にないですよ」と具志堅さんもすぐさま重ねる。「リモートなどで働き方が変わって、地方でも新しい体験や環境、選択肢がつくれます」

ココノバから広がる新しい価値観。たくさんの挑戦を„ここの場„なら実現するチャンスがある。「今は地方にこそ可能性がある時代です」。具志堅さんはそう力を込めた。

(長濱 良起)


coconova

住所:沖縄県名護市宮里 1004

twitter @coconova_nago
Instagram @coconova_nago

 

(2022年4月21日付 週刊レキオ掲載)