ハブ咬症被害の多い9―11月、予防と対策は!?【島ネタCHOSA班】


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一部の離島を除き、ハブ類が分布する沖縄。ハブにかまれる咬症(こうしょう)被害が多くなる9~11月に、県がハブ咬症防止運動を実施しています。週刊レキオでも、ハブ咬症の予防と対策について確認します。

ピーク時には年間500人を超えていたという沖縄県のハブ類咬症者数。ここ数年は年間50~60人ほどで推移し、2000年以降はハブ類の咬症被害での死亡例はないとのことですが、それでも県民が日常的に遭遇する危険であることに変わりはありません。

調査員は、ハブ咬症の予防と対策について、専門家に話を聞くことにしました。

沖縄本島産のハブ 写真提供・村山 望

ハブと出合ったら

訪れたのは、うるま市兼箇段の沖縄県衛生環境研究所。衛生科学班 生物生態グループの寺田考紀主任研究員、仲間幸俊研究員が出迎えてくれました。

ズバリ、本命の質問からぶつけてみます。「もしハブと出合ってしまったら、どうしたらいいのでしょうか?」

この質問に対し「出合った場所によっても対処法が異なります」と寺田主任研究員。

「林や森など、人の生活圏と離れた場所で遭遇した場合は、近寄らないように遠ざかれば大丈夫です」

沖縄県衛生環境研究所 衛生科学班 生物生態グループの寺田考紀主任研究員(左)、仲間幸俊研究員

近づいても逃げない場合はありますが、人を追ってくることはないそう。

「人の生活圏、住宅地や畑などで出合った場合は、取り除くことが望ましいですね」

もし逃してしまったら、他の人に危害が及ぶ可能性があるため、この場合は殺すほうがよいそう。具体的には、長い棒で首をたたく、車でひく、「ハブノック・ネオ」というハブを殺すスプレーを噴射するなど。生け捕りは危険なのでやめましょう。

「ポイントは安全な距離を保つこと。ハブは、体の全長の3分の2の範囲しか攻撃することができません。ジャンプはしません」

ハブの体長が1.3~2メートルほどの場合、1.5メートルほど距離を取っていれば安全ですね。棒も1.5メートルほどの長さが望ましいようです。

もし目の前にハブがいて自分で対処できない場合は警察へ、逃げられてしまったら市町村役場へ連絡するのが基本。役場の担当者が、ハブ捕獲用の罠を設置してくれるケースもあるようです。

ハブ捕獲器のサンプル

かまれたらどうする?

ハブに出合わないようにするための対策としては、家の周りを高さ140センチ以上の塀で囲む、屋敷や畑の周りをナイロン網のフェンスで囲む、エサとなるネズミを退治するなどがあります。

しかし、それでも万一ハブに出合い、かまれてしまったら?―

「まず、慌てずにそのヘビがハブかどうか確認してください」と仲間研究員。ハブなら牙の痕が普通2カ所(1カ所、3・4カ所のこともあり)。よく間違えられるアカマタの場合、細かい歯のかみ痕になるとのこと。「ハブの場合、5分もしないうちにかまれた所が腫れてきて、痛みます」

もし腫れてきたら、大声で助けを呼び、病院へ連れて行ってもらいます。自力での車の運転は極力控えましょう。

病院まで時間がかかる場合は、指が一本通る程度にゆるく縛ります。「きつく縛りすぎるとかえって逆効果。また、傷口から毒を吸い出すのは、最近ではあまり効果がないとも言われています」。痛みを紛らそうと鎮静剤やお酒を飲むのもNGです。

ハブにかまれ腫れた右手

実は今年、レキオ関係者でハブ咬症者が出ました。右手の甲をかまれ、1時間ほどで病院を受診。その間に右手は痛みを伴い、大きく腫れたそうです(左の写真)。破傷風の予防接種後、抗毒素血清を点滴で3時間かけ投与。その後、約半日で右腕全体が肩まで腫れ、2泊3日の入院の間に、抗生剤点滴を4回。退院後も1週間以上、腫れと痛みが続いたと言います。

読者の皆さんも、ハブ咬症の被害には十分に気を付けてくださいね。
 


ハブに気をつけよう!(沖縄県ホームページ)

https://www.pref.okinawa.lg.jp/site/hoken/eiken/eisei/habutop.html

(2022年9月28日 週刊レキオ掲載)