保存食「ハンチュミ」ってどんなもの?【島ネタCHOSA班】


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ネットで読んだある記事で、「ハンチュミ」なる沖縄料理が紹介されていました。保存食のようですが、私は初めて目にする名前です。どうやら県内でもあまり知られておらず「幻の」料理なんて紹介も。どんなものなんでしょう、作り方や由来が知りたいです。

(那覇市 トゥルーボールブリッジ)

「ハンチュミ」、調査員も初めて知った名前です。少し調べてみると、煮込んだ豚肉をほぐした、佃煮や肉でんぶのようなものだということは分かりましたが、やはり、日常的に食べられている料理ではなさそうですね。

ハンチュミについてより詳しく知ろうと、調査員が訪れたのは、那覇市久米の沖縄調理師専門学校。講師であり、琉球料理伝承人の金城助さんにお話を聞くことにしました。

昔は常温保存

沖縄調理師専門学校の専門調理師、琉球料理伝承人の金城助(ひろ)さん

「ハンチュミは、かつての“那覇”、辻町などで提供されていたおもてなし料理です。手間暇かけて作られており、冷蔵庫のない時代の保存食でもありました。甕(かめ)などに入れて保存していたようです」

そう教えてくれた金城さん。一部の地域でしか作られていなかったこと、そして作るのに時間がかかることが、ハンチュミがあまり目にできなくなっている要因であると考えています。琉球料理に携わっている金城さん自身も、作る機会はあまりないそうです。

今回は、沖縄調理師専門学校の教室をお借りして、実際にハンチュミを作ってもらいました。レシピは以下に記すのですが、作る前に一つ注意点が。それは、味付けの主となるしょう油の量。常温保存を念頭にした伝統的なレシピと、現代人の食生活に合わせた味付けでは塩味が全然違うのです。食べやすい味わいを目指すなら、しょう油の量は75ミリリットルから始め、徐々につぎ足していきましょう。

レシピを紹介

では、実際にハンチュミを作っていきます!

~ハンチュミ材料~

豚赤肉(グーヤヌジ=豚の腕肉がおすすめ)…600グラム
削り節…18グラム
グラニュー糖…100グラム
しょう油…75~200ミリリットル
(※伝統的なレシピを再現する場合は200ミリリットルを使用。好みの塩分量に調整したい場合は75ミリリットル程度から適宜調整)
泡盛…200ミリリットル
ショウガのみじん切り…大さじ1
 

~作り方~

1.豚肉は柔らかい肉質を選び、繊維を短くするように3センチの長さに切る

2.削り節をさっと炒り、温めたあとで細かくほぐす。市販の削り節パックでも可能

3.厚手の鍋に砂糖、しょう油、泡盛を入れて煮立たせ、豚肉、削り節、ショウガのみじん切りも加える。豚肉から出るアクをしっかり取ることが、おいしく仕上げるコツです

4.3.に落とし蓋(ぶた)をして、弱火で2時間程度、焦がさないように煮込みます。しょう油を少しずつ足し、味を調整しましょう

5.煮汁がなくなるまで煮詰めたら、肉を火からおろし、箸や手で細かく割いて出来上がり。手を使った方が、細く、ふんわりとした食感になります

ご覧の通り、工程や材料自体はシンプルですが煮込みや、お肉を割くのに時間がかかる料理だということが分かります。

出来上がったハンチュミは、やわらかく、ご飯との相性ぴったり。しょう油少なめのレシピでも保存容器に入れ、冷蔵すれば1カ月程度保存も可能だとか。沖縄そばに載せたり、チャーハンの具に使うのもおすすめです。

「現代人は忙しく、短時間で作れるものが好まれていますが、時間をかければおいしいものができる、ということもちゃんと分かっています。ハンチュミは手間暇かかる料理ですが、常備食として重宝しますよ」

最後に金城さんは、家庭での手料理の素晴らしさを教えてくれました。沖縄伝統の保存食、各家庭で楽しんでみませんか?

できあがったハンチュミ

学校法人 新島学園 沖縄調理師専門学校

那覇市久米1-18-7

TEL 098-861-7100

(2022年11月17日 週刊レキオ掲載)