香り高い 久米島かまぼこ グルクンかまぼこの照屋 當山礼子さん


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懐かしい母の味を求めて

店頭に立つ當山礼子さん。田芋の唐揚げや玄米ジュース、母・照屋ミツさんの作った総菜も並ぶ=那覇市壺屋太平通り商店街の「グルクンかまぼこの照屋」 写真・村山望

揚げたてのグルクンかまぼこを口に入れると、魚のうまみと香ばしさが口いっぱいに広がっていく…。那覇市の太平通り商店街にある「グルクンかまぼこの照屋」は、昔ながらの製法でかまぼこを製造している。母の照屋ミツさん(76)が創業した同店を継ぐのは四女の當山礼子さん(39)。一時は休業していたが、母から技術を学び、約2年半前に再開。多くのファンに愛されるかまぼこの味を守り続けている。

まだ薄暗い早朝。明かりのともる作業場を訪れると、當山礼子さんが一人でグルクンかまぼこ作りを始めていた。「お魚はグルクンだけしか使っていないのがこだわり」と言う礼子さん。ミンチにしたグルクンに少量のつなぎを加えて練り、成型したら、蒸して高温でさっと揚げる。一つ一つの工程を手間暇かけて重ね、かまぼこの姿に変わっていった。

休業を経てかまぼこ復活

母・照屋ミツさんの始めたかまぼこ店を引き継ぎ約2年半。「母の味を出すのに苦労してきたけど、味はやっと落ち着いてきました」と話す。久米島出身のミツさんが同店を創業したのは約35年前。久米島の特産品、グルクンかまぼこを作ってきた姉から技術を習得し、子ども5人を育てながらかまぼこ作りに励んだ。四女の礼子さんも子どもの頃から母の仕事を手伝っていたという。ほとんど手作業だった当時は「久米島から運ばれてきた魚を家族総出でさばいたりしていました」と振り返る。

2015年にミツさんが体調を崩し、長年親しまれてきた店を約5年間休業した。その間、親戚に使ってもらっていた店舗が空いたことが転機に。父・浩世さんが亡くなった後で、ミツさんが落ち込んでいた時期でもあった。経営業をいつかやってみたかった礼子さんは、母に元気を出してほしいという思いも重なり「私がやるから一緒にやろう」と復活に乗り出した。

ミンチ状のグルクンを機械で練る。機械は母の代から約30年使い続けている

再開当初はミツさんが作っていたが、約半年後に一時入院したことをきっかけに 礼子さんが一人で作るように。「その時期に食べたお客さんからは『ちょっと違う』と言われました」。失敗を何度も重ねた。完全に数値化されたレシピはない。「母が目分量で続けてきた意味がやっと分かってきて、奥が深いなと思います」。グルクンの脂がどれだけ乗っているかで入れる水の量も変わってくる。でも目指すものは分かっていた。味や食感はもちろん、練るときの音、揚げたときの油の音も覚えている。「音が母の時と一緒だったら、大丈夫だな」と確信できた。そのうちに新規の客が増え始め、気付いたら昔の客も戻ってきてくれた。

厳しい中にも優しさを感じるという常連客にも支えられている。「『このかまぼこ作るのにどんなに大変か分かっているから、値段は気にせず頑張ってね』と言われたときには、見てくれている人もいるんだと涙が出ました」。子どもの発熱や行事で休業する時も「今は子どもが一番。ゆっくりでいいから頑張りなさい」と理解を示してくれる。

指の腹で表面をさっとなでて一つ一つ成型する

作るのも食べるのも好き

金武町で田芋農家を営む実さんと結婚した礼子さん。現在は金武町に住み、畑作業も行う。7歳と5歳の息子の子育て真っ只中だが、夫・実さんや家族の協力のおかげで続けてこられた。店頭には夫の畑で取れた田芋の唐揚げも並ぶ。母の作る惣菜も人気だ。「田芋もかまぼこに似ている。どちらも沖縄独自のもので手間暇がかかるけど、こんなに良いものだよというのを伝えたい」と話す。

店頭には、礼子さんお手製の玄米ドリンクや田芋の唐揚げも並ぶ。母の作った総菜も人気

子育てが一段落したら、営業日を増やし、新商品を生み出していきたいという。かまぼこの魅力を聞くと「地味だけど本物。体にも良いものだし、昔から飽きられないで食べられているのも魅力。でも何よりも作るのも食べるのも好きなんです。難儀もしている分、喜ばれたらうれしい」と笑顔で話した。

(坂本永通子)


イベント 出店情報

金武町物産展

日時:1月18日(水)~20日(金)11:00~19:00(最終日は18:00まで)

場所:パレットくもじ前広場


 

グルクンかまぼこの照屋

那覇市壺屋1-1-1(太平通り商店街内)
TEL 080-6494-9240

営業日:金曜・土曜
営業時間:12:00~15:00

※金武町並里区売店でも販売(冷凍)

 

かまぼこは皮入りと皮なしの2種類。魚のうまみがより強い皮入りは一番人気だ。冷めたら両面に少し焦げ目が付く程度に焼いて食べるのがお勧めだという

(2023年1月12日付 週刊レキオ掲載)