障がい者アートの可能性信じて 一般社団法人ドアレスアートオキナワ


この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報社

障がい者アートをもっと身近に

ドアレスアートオキナワの理事でありアーティストでもある宮城恵輔さん。デジタル画とは思えない油絵のようなタッチが魅力だ=パイプラインコーヒー(宜野湾市大山) 写真・村山望

2022年2月に設立されたドアレスアートオキナワは、県内の障がい者アーティストの発掘と社会的自立支援のサポートをする団体だ。「ドアレス」とはドアのない自由な世界へ羽ばたいてほしい、という願いが込められた造語。所属するアーティストを障がい者アーティストではなく、「ドアレスアーティスト」として一流に押し上げることを目的としている。理事兼事務局長の呉屋マリヤさんと、理事であり自身もドアレスアーティストである宮城恵輔さんに話を聞いた。

現在、ドアレスアートオキナワには老若男女、約20人のドアレスアーティストが所属。抱えている障がいの種類も異なれば、作品のかたちも絵画・造形・ハンドメードなどさまざまだ。

昨年2月の設立後、はじめに取り組んだのは、工事現場の壁面に絵を掲示する「一銀通りアートワーク」だった。代表理事である高倉幸一さんが那覇市内に新規ホテルを開業するにあたり、工事現場の壁面にドアレスアーティストの作品を掲示したのだ。工事警備員から「絵があるとやっぱり違うよね」という感想もあったとのこと。

アートを通した自立支援

初の展示販売会はデパートリウボウの特設スペースで行った。偶然立ち寄った来場者に、ドアレスアートオキナワの活動と、ドアレスアーティストを知ってもらう機会となった。同時に、アーティスト一人一人のモチベーションにもつながったという。

昨年デパートリウボウで開催した展示販売会の様子(提供写真)

20代の頃の事故で両手に障がいを負ったドアレスアーティスト・宮城恵輔さんはタッチペンを口にくわえ、タブレットで絵を描く。油彩画のような独特なタッチは、絵の具を扱えない宮城さんにとって憧れである油彩画のような絵をイメージしている。

実際、展示販売会でも「これ、本物の絵の具じゃないの?」という来場者の声が多数あったそうだ。

作画の様子。両手が使えないため、口にタッチペンをくわえてタブレットで絵を描く。

宮城さんの目標はアーティストとして生計を立てること。「有名なアーティストになって生計が立てられるようになったら、他のいろんな障がい者にも夢を与えられると思っています。だから多くの人に絵を見てもらえて、ほめてもらえるのがうれしいですね」と語る。

作品を展示・販売する場があれば、在宅アーティストになれる可能性がある。そのため、ドアレスアートオキナワでは、展示販売会を含むさまざまなイベントを行っている。

「その売上自体が彼らの直接的な活動費やモチベーションにもつながる。そのサイクルをもっと強化していけば、アートを通した自立支援にもなる」と呉屋さんは力を込める。

他にないものを生み出す力

昨年、ドアレスアートオキナワでは、展示販売会を2回とシンポジウムなどを開催した。

ドアレスアートの活動に関して、呉屋さんは次のように語る。

「アーティストさんたちの作品が売れて、本人が喜んでいる様子とか、継続して応援してくれるお客さま方の声をいただくとやりがいを感じる」

ドアレスアーティストの中には、自分の作品が展示されたことや作品が売れるということに感動し、涙を流す人もいるという。ドアレスアートの経験を通して、アーティスト自身にとっても貴重な成功体験となるのだ。

呉屋さんと宮城さんに、ドアレスアートの可能性について聞いてみると、次のような答えが返ってきた。

理事兼事務局長の呉屋マリヤさん

「アートにかける才能ってい障がい者アートをもっと身うのは、沖縄はすごく多彩。これは健常者のみならず障がい者にも言えます。企業さんに認知してもらったり、多くの人に知ってもらうことでドアレスアーティストたちが少しずつ歩み始めているのも実感しています」(呉屋さん)

「今の時代って良くも悪くも個性的でありたいというか、他の人が持っていないものを持っていることがカッコよかったりする感覚ってあるじゃないですか。そういうものを生み出せるのがドアレスアートだと僕は思っています」(宮城さん)

現在、本島北部で開催中のやんばるアートフェスにも参加しているドアレスアートオキナワ。今後の活動に期待したい。

(元澤一樹)


「やんばるアートフェス2022-2023 シマを繋ぎ シマに響く」

日時:~4月9日(日) 11:00~17:00
入場無料
※メイン会場・大宜味村立旧塩屋小学校を含む複数会場は、金土日祝のみ開館

ドアレスアートオキナワ
http://www.doorless-art-okinawa.com/
 

(2023年1月19日付 週刊レキオ掲載)