座間市の事件から考える ネットで知り合った人と会うリスク モバプリの知っ得![32]


座間市の事件から考える ネットで知り合った人と会うリスク モバプリの知っ得![32]
この記事を書いた人 稲嶺 盛裕

10月末、神奈川県座間市のアパートの1室から男女9人の遺体が発見される、とてもショッキングな事件が発覚しました。警察はその部屋に住む27歳の男を逮捕しました。
男はアパートに入居し、わずか2ヶ月間で9名を殺害。
浴室で遺体を切断し、消臭用にネコのトイレ用の砂をかけてクーラーボックスに保存するという残忍な手口なども報じられ、不安が広がりました。

発覚から3週間経った今でも、詳細が明らかになっていないこともあり、インターネット上ではさまざまな憶測も飛んでいます。
しかしながら、今わたしたちがやるべきは「推測や噂を元に真実を解明する」ことではなく、「事実を元に再発しない方法を考える」ことではないでしょうか。

この事件はまだ捜査中で罪が確定したわけでもありません。けれど、どんな理由や状況であれ殺人は許されません。
一方で、事件が起こる前段にネット空間に広がる〝世界〟があります。現代社会で生きるほとんどの人がネットとの関わりを持っている以上、その使い方を考えることは大切なことです。

今回は、改めて「ネットで知り合った人と会うリスク」について考えたいと思います。

ネットは「なりすまし」が容易である

今回の事件、被害者の大半はTwitterを通じて容疑者と知り合ったことが分かっています。

Twitterは140文字の短文を投稿できる交流サイトです。
実名登録が強制されていないため、ハンドルネームなどを使って共通の趣味を持つ人と知り合い、やり取りすることができます。

容疑者の男はTwitter上で「首吊り士」を名乗り、「首吊りの知識を広めたい」などと書き込み、自殺願望を持っている女性に接触。
その後はダイレクトメッセージを使い、他の人に見られないよう個別にやり取りし、自宅に連れ込んで殺害していることが分かっています。

容疑者はTwitter上で自殺を手助けする「ほう助」をほのめかす一方、「力になりたいです」「ご相談ください」などの優しい・丁寧な口調で、信頼させる投稿もしていました。

容疑者の供述によると、自殺願望がある人を誘い出して直接会ったが「本当に死にたいと言う人はいなかった」とのことでした。

毎日新聞-殺人容疑で追及 「死にたい人いなかった」

被害者は、自殺を考えるほど追い詰められていた一方で、誰かに救ってほしかった。
こうした心理に付け入り、Twitterを使って誘い出したのかもしれません。

(今回の事件を踏まえ、Twitterでは自殺や自傷行為の兆候が見られた場合はメンタルヘルスパートナーの連絡先などの情報を伝えるようルールを改定。悪意を持った人よりも先にきちんとした機関が捕捉できるように取り組んでいます)

ネットでは、写真や文字を使って簡単にコミュニケーションを取ることができます。
「書けばそこまで」の世界なので、自分の素性を簡単に偽ることもできます。

イラスト・小谷茶(こたにてぃー)

女子大生と思っていたら実はおじさんだった、お金持ちに見えたけど実は普通の経済状況だった。
画面の向こう側の人が、本当はどんな人なのか分かりにくい。それがネットです。

今回のように殺人事件にまで発展しなくても、ネットで知り合った人に会ってみたら、体を触られたり、お金を盗まれたり、さまざまなトラブルに巻き込まれる可能性があります。

気軽にコミュニケーションを取り、「相手を分かったつもり」になっていると、直接会うことの抵抗感が薄れますが、今一度冷静になり「未成年はネットで知り合った人と直接会わない」「大人も2人きりでは会わない」など、自分の中でガードを固めた方がいいでしょう。

人を分かったつもりになる怖さ

そもそもネットに限らず、人の本心や本性は分かりにくいものです。
毎日顔を合わせている学校の友人も家では違った一面を持っているでしょうし、深く知っていたはずのパートナーも一緒に暮らして初めて知る部分が出てくる…などなど。

直接会う人との人間関係でもこうした状況ですので、文字と写真だけで交流するネットの場合「推して知るべし」です。

インターネットやSNS、交流サイトなどが普及することによって、多くの人と知り合うことが可能になりました。
便利で楽しい反面、使い方を誤ると悪意を持った人と知り合う可能性も出てきますし、トラブルに巻き込まれることもあります。

自分や、大切な人を守るために、改めて「ネットで知り合った人と直接会うリスク」を考え、ルールを設けるなど注意が必要です。

 

 琉球新報が毎週日曜日に発行している小中学生新聞「りゅうPON!」11月19日付けでも同じテーマを子ども向けに書いています。

 親子でりゅうPON!と琉球新報style、2つ合わせて、ネット・スマホとの付き合い方を考えるきっかけになればうれしいです。

【プロフィル】

 モバイルプリンス / 島袋コウ 沖縄を中心に、ライター・講師・ラジオパーソナリティーとして活動中。特定メーカーにとらわれることなく、スマートフォンやデジタルガジェットを愛用する。親しみやすいキャラクターと分かりやすい説明で、幅広い世代へと情報を伝える。

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