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自由に町歩く楽しさ 100cmの視界から―あまはいくまはい―(13)


自由に町歩く楽しさ 100cmの視界から―あまはいくまはい―(13)
この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報社

 キラキラ光るイルミネーションに包まれ、ワクワクする師走の町。私が小・中学校で養護学校(現特別支援学校)に通っていた時、毎年「暮れの町見学」がありました。スクールバスに乗ってショッピングセンターやデパートに行き、暮れの町のクリスマス飾りや、買い物を楽しむのです。予算内で、好きなものと、クリスマス会のプレゼント交換用のプレゼントを買うのが恒例。お昼ご飯も食べ、普段一緒にお出かけすることのない先生、友だちと出かけた楽しい思い出です。

 しかし買い物を楽しむだけでなく、そのショッピングセンターへの交通手段も、普段から使えるものだとよかったのに、と思ってしまいます。だって、私が買い物に行きたい時、スクールバスがショッピングセンターへ連れて行ってくれるわけではないからです。

小学校の時、養護学校でのクリスマス会。筆者は前列の右から2人目。

 小学校高学年になると、歩ける子どもは、一人もしくは友だちとお出かけするのが普通です。それが車椅子の私にはなかなかありませんでした。平坦(へいたん)に見えるような道でも、少し段差があったり、勾配があったりと、手動車椅子では力が必要で、一人での移動は難しく、誰かに車椅子を押してもらう必要があるからです。外出したい時は親にお願いし、親の日程や機嫌を調整し、連れて行ってもらう必要がありました。いつも「もっと自由に動きたい」と思っていました。

 大学進学のため東京で生活を始めた私は、電動車椅子を使い始めました。一人で動けることが嬉しくてうれしくて。大学と自宅まで、徒歩10分の距離を、30分以上かけて通い、コンビニを何件もはしごしたり、わざと遠回りしたり。傘をさして外出するのもその時が初めてでワクワクし、雨が降るのがうれしい子どものようでした。沖縄での子ども時代も、電動車椅子を使い、誰にも気を遣わず、自分のペースで町を歩きたかったです。

 沖縄は車社会で、電車や地下鉄がないため、車椅子で出かけることが大変なこともあります。でも那覇市内であればモノレールはバリアフリー、終点の那覇空港もバリアフリーで、ショッピングもご飯も楽しめ、景色も最高! そして県外や海外へとつながる場所です。車椅子を使う子どもたちが、モノレールや那覇空港を使い、自由に動く楽しさを実感できると、その後の可能性が広がることでしょう。

 車椅子でも使える公共交通手段や建物が増えるのを願うのと同時に、車椅子の子どもがそれを使いこなす体験に恵まれ、楽しい未来につながりますように!

(次回は12月25日に掲載します)

伊是名夏子

 いぜな・なつこ 1982年那覇市生まれ。コラムニスト。骨形成不全症のため車いすで生活しながら2人の子育てに奮闘中。現在は神奈川県在住。

 

(2017年12月4日 琉球新報掲載)