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お菓子のレイ、メリケン粉投げ? 沖縄独特の卒業式カルチャーをまとめてみた


この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報社
2018年3月1日に行われた県立高校卒業式。お菓子やバルーンをいっぱいもらった笑顔の卒業生=3月1日、那覇市の県立小禄高校

3月は卒業式シーズン! 沖縄では例年3月1日に公立高校の卒業式が開かれます。続く2週目あたりに中学校の卒業式、その翌週に小学校が卒業式がピークを迎えます。卒業生のみなさん、おめでとうございます。

さて、沖縄の卒業式によく見られる光景をご存じですか?

お菓子の首飾りは定番

1つ目は、卒業生に贈る〝お菓子のレイ〟です!

お菓子のレイとは…ハワイで歓迎される花輪ような、お菓子の首飾り。チョコやアメ、うまい棒などを透明な筒状の袋に入れて輪にしているシロモノです。何と最近ではレイだけでなくて、お菓子の帽子、傘などもあるようです。

公立中学校で行われた卒業式後の様子。花束やバルーンと一緒にお菓子の帽子、レイを大量にもらっている生徒の姿があった=2017年3月、沖縄県内

この慣習は、私が学生だった頃からあったので、卒業式ならではの慣習なのだと思っていましたが…驚いたことに、沖縄ならではのお祝いスタイルのようなのです。

「卒業式 お菓子」

などと関連のキーワードを入力してインターネットを検索すると、出てくる写真は沖縄の様子ばかり!

卒業生が体育館から出てくるのを待つ人=2017年3月、沖縄県内

約1年前に東京から沖縄に越してきた30代の女性に聞いてみると「花束はもらったけど、お菓子の首飾りは聞いたことがない!」と目を丸くしていました。 移住して20年近くになる大阪出身の40代女性も「そんなもん見たことない。むしろ欲しかったよ」と驚きと興奮ぎみに反応してくれました。

見てください!この動画。確かに、顔が埋もれるほど、こんなにたくさんお菓子をもらえるって、子どもたちにはうれしいはずですよね。

https://www.youtube.com/watch?v=oZk5TpJ4B7M

「もらえない子もいる」 学校では”自粛”呼びかけ

2017年3月、沖縄県内の公立中学校の卒業式に足を運びました。卒業式を終え、花道を通って卒業生が体育館を出ると、そこには大勢の家族と友人が待っています。中には花束やお菓子を持って、待ち構えている人たちも。 家族や友人に呼び止められて、カラフルでおいしそうなお菓子のレイの贈られた卒業生たちは、自然と笑顔がこぼれます。

けれど当然、”たくさんもらっている子”と”卒業証書だけを片手に校門を出ていく子”に分かれてしまいます。そこで学校では、毎年のように「プレゼントの校内への持ち込みは控えてください」との呼び掛け文書が配られているのも事実です。

2018年の那覇市立中学校の卒業式は3月10日。 ある学校では、プレゼントを贈るための慣習が「1・2年生による金銭せびりにつながった事例もある」として、このような文書が配られました。 3年生の保護者は、確認済みの署名をして学校に提出する仕組みだったようです。

那覇市内の中学校で3年生の保護者対象に配られた文書

花束・プレゼント等の持ち込み禁止理由として「花束・プレゼントをもらえる生徒、もらえない生徒の場面が生じる事は学校教育の面からふさわしくないため」と書かれている

以前は、中学校や小学校ではまだ〝お菓子レイ〟の慣習は少なかったように思うのですが、近年は中学校や小学校でも増えているようです。

卒業式シーズンになると、地域のスーパーや商店にもお菓子のレイを並べたコーナーが設けられます。

お菓子のレイを陳列するコーナー=3月、沖縄県内

那覇市内には、普段は倉庫として使っているスペースを使って、3月だけは「お菓子のレイ」専用のストアにするという店舗もあるのです!「卒業おめでとう」という言葉と共に、壁いっぱいにお菓子のレイが飾られています。残念ながら、お話は聞かせてもらえなかったので場所や写真も紹介できませんが、気になった方は探してみてくださいね♪

「メリケン粉投げ」って? 謎の解けない”伝統”

もう1つ。沖縄の卒業式シーズンになると、必ず話題に上るのが「メリケン粉投げ」です!

若いみなさんは「メリケン粉? 何それ?」て感じでしょうか。この言葉が理解できるかどうかで、世代がバレてしまう感じもします…(笑)。

「メリケン粉」とは、「アメリカン粉」が訛って生まれた言葉といわれています。いわゆる小麦粉のことです。昔、アメリカから輸入されて、社会に広がったことからこう呼ばれているのです。

つまり、「メリケン粉投げ」=「小麦粉投げ」です。
卒業式になると、なぜか小麦粉を投げ合うという伝統が、一部の地域で今なお続いているのです。

その由来は…私も調べてみましたが、いまだ謎です…。インターネット上には一部、「1960年代頃からあった」という情報もありますが、本当でしょうか?  沖縄県民のソウルフード?の「沖縄天ぷら」や「サーターアンダギー」とは、何か関係があるのでしょうか? 那覇市に住む53歳の男性によると、「先輩の頃からあった」というので、少なくとも40年以上前からあるもので、とりわけ新しい慣習ではないようです。 さらに「生卵を一緒に投げると、本当に大変なことになっていた」とも語りました。

地域や学校は「メリケン粉投げ」阻止に必死! スーパーとの連携も

もちろん決して褒められたものではない「メリケン粉投げ」の慣習。近年では「あまり見かけなくなった」との声もありますが、つい先日2018年3月9日に卒業式が行われた一部地域で「発生した」との情報も! ただ、慌てて駆け付けた時には跡形もなく、確認できませんでした。

関連記事:メリケン粉投げ、卒業しよう 未成年者に販売自粛も 那覇

2017年には琉球新報に、こんな記事が掲載されました。近年は学校や各地域あげて「メリケン粉投げ」のない卒業式にしようと取り組みが広がっています。

今年も、沖縄市では市教育委員会や市PTA連合会、各学校などでつくる〝卒業式に向けての連絡会〟なるものが、スーパーや洋裁店などにメリケン粉の販売や特攻服などの刺しゅうの注文を受けないよう求める文書を配りました。

スーパー入口の掲示板に、小麦粉販売の自粛を求める貼り紙がされている=3月6日、沖縄市内

3月10日に卒業式が予定されている沖縄市。コープ山内(石川健司店長)では、お店の出入り口付近の目立つ場所に、連絡会からの文書を掲げ、販売自粛などへの理解を求めています。掲示板のほか、お店のバックヤードにも貼り、従業員への周知を図っているほどです。

同店で働いて約20年になるという真栄田良乃さん(56)と津嘉山貴子さん(47)は「メリケン粉投げ」について、「近年は少なくなってきている」と実感しているそう。 それも、そのはず。沖縄市教育委員会の担当者によると、メリケン粉投げを防ぐ取り組みは約10年前から力を入れているとのことでした。

けれど、昨年は中学生がホットケーキミックス3袋を買おうとし、レジで断った事例があったと話してくれました。津嘉山さんは「本当にホットケーキを作ろうとしていたら申し訳ないが、この時期なので卒業式の後に買いに来てもらうように伝えた」と言います。

2016年には「メリケン粉投げ」を巡って、こんな心温まる話題も。

関連記事:「卒業式用」のメリケン粉、諭されフードバンクに寄付(2016年3月30日)


 

地域がここまで一丸となって、阻止しようとする「メリケン粉投げ」!
それにしても、その由来などの詳細は謎のままです。

そこで・・・・是非とも皆さまの情報をお待ちしています。

◇東江亜季子(琉球新報Style編集部)、清水柚里(琉球新報中部支社報道部)

 

~ この記事をまとめた人 ~

東江亜季子(あがりえ・あきこ) 琉球新報Style編集部。りゅうちゃん日記では「炎のダンサー アッコ先生」で登場する。 編集局文化部、中部支社報道部などで記者を経験。著書に『私のポジション 「沖縄×アメリカ」ルーツを生きる』。新聞で学ぶ学生向け講座を開発したり、大学入試改革を見据えた講座をしたり、教育、ダンス、記者を行ったりきたりしている。ダンス仲間募集中!