公共施設のお宝、発見してみた。→芸術家の郷土愛、感じた。 「てみた。」46

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いつも何気なく利用している役場や図書館などの公共施設に貴重な美術品が飾られている。野球選手や監督、アーティストのサイン入り色紙も。どのような作品がどういう経緯で飾られているのか―。謎を解くために「公共施設のお宝発見」の旅に出てみた。




<読谷村役場>まるで博物館、一級品ずらり


池原ケイ子さんの読谷山花織。読谷村長応接室にある。

読谷村は伝統工芸の分野で3人が人間国宝となった人材豊かな村。「やちむんの里」があり、伝統工芸が盛んな村だけに、読谷村役場は「ここは博物館?」と見まがうほど一級品がそろっている。

村役場3階の応接室には、人間国宝の金城次郎さん(1911~2004年)の壺、玉那覇有公さん(1936年~)の紅型が出迎える。もう一人の人間国宝は読谷山花織の与那嶺貞さん(1909~2003年)だ。

金城さんは、72年に那覇市壺屋から読谷村に移り住み、「やちむんの里」の基礎を築いた。与那嶺さんは一時途絶えていた読谷山花織の復興に64年から取り組み、99年に人間国宝となった。玉那覇さんは2001年から読谷村内に工房を構え、制作に励む。

石嶺伝実村長は「伝統工芸の振興は、村づくりの柱としてやってきた。3人は村の誇りでもある」と語る。

応接室には池原ケイ子さんの読谷山花織、琉球ガラスの稲嶺盛吉さんの大皿や花瓶、陶芸家・大嶺實清さんの大型急須、山田真萬さんの大皿なども並ぶ。壁には版画家の名嘉睦稔さんの「飛鳳(ひほう)」がある。

全て読谷在住の作者から寄贈された作品という。「役場のお宝」は、県民も誇れるお宝でもあった。


金城次郎さんの壺を手にする石嶺伝実読谷村長。後方の紅型は玉那覇有公さんの作品。壺や皿が置かれている長さ4メートルの棚は、リュウキュウマツの1枚板から制作された。村内で建具・家具製作業を営む小平武さんと、村内の歯科医・金城睦長さんから2004年に寄贈された=読谷村役場

琉球ガラス工芸家で「現代の名工」でもある稲嶺盛吉さんの作品。泡ガラス技法の先駆者として知られている

名嘉睦稔さんの版画のデザインを基に制作されたステンドグラスの「飛鳳」。読谷村をかたどっており、村役場正面に飾られている

沖縄戦や原爆などを描いた作品で知られる画家の丸木位里・丸木俊夫妻の位里さん制作の壺。「読谷村三部作」を描いた際、読谷に滞在し制作していたという

村役場1階にある、陶芸家山田真萬さんの作品「波」。造形作家でもある山田さんのダイナミックな魅力が伝わる


<県議会>沖縄政治の中心にも…あった!


沖縄を代表する画家で陶芸家の與那覇朝大さんの陶板。県議会の議場を取り囲むように46枚配置されており、一つ一つ模様が異なる

沖縄の政治の舞台である那覇市泉崎の県議会。議場の周りには、沖縄を代表する画家で陶芸家の與那覇朝大さん(2008年、74歳で死去)が制作した30センチ四方の陶板が46枚飾られている。陶板には鳳凰(ほうおう)やシーサー、龍など異なる図柄、4文字の漢文字の訓示や格言などが描かれている。

県議会事務局によると、県議会落成時に寄せられた陶板で、「絵と漢文字を組み合わせることで、議会にふさわしい重厚さや威厳、沖縄の文化を後世に伝えたい」という與那覇さんの思いが込められているという。

もう一つのお宝は、議長応接室にある5斗のかめだ。県議会が100年の節目を迎えた2009年に、県酒造組合連合会から寄贈された。もちろん古酒が中に入っているが、これまで誰も開けたことはない。

歴代議長は「自分が退任する際に飲んでみたい」と思い描いているようだが、実現していない。


県議会の議長応接室にある、県内48酒造所の泡盛が入ったかめ。2009年に寄贈後、一度も開封されたことがない。後方にあるびょうぶは、書家の茅原南龍氏による議会100年決議の書


<県立図書館>本の虫たち優しく見守る



12月の那覇市泉崎への移転に向け、作業が進む同市寄宮の県立図書館。1983年に完成した現在の建物は、3月に貸し出し業務を修了した。やましろ記者も小学生の頃、毎週のように通った。

サービスカウンターを抜けると正面に大きな壁画がある。高さ約5.5メートル、幅約3.7メートル。人や街、動植物が縦長の画面全体に、宙に浮いているように描かれている。人々の幸せそうな表情が印象的で、次に何を読もうか、ワクワクして書架の間を歩き回った少年の頃を思い出す。

「読書の楽しさを表現したかった」と話すのは、原画を描いた画家の稲嶺成祚(せいそ)さん。建物が完成した当時の図書館長で高校の同級生だった大城宗清さんに作画を依頼された。空間を固定せず人や静物を描く稲嶺さんの絵の転機にもなった作品だという。

図書館によると、休館前、長年親しんだ壁画を名残惜しそうに眺める利用者の姿が見られた。壁画が壊されるのではないかと心配した人からの問い合わせもあった。建物は図書館移転後、別の施設として活用されるため壁画も残る予定。原画は新館での活用を検討中だという。

少し照明を落とした静かな館の中で、壁画は再び人々が見上げるのを待っているようだった。



<嘉手納町役場>町おこし 音楽でGO!


郷ひろみさんのサインを手にする嘉手納町の當山宏町長(中央)と、郷さんの観光大使の名刺の拡大版を持つ上地康夫課長(左)、任命式の写真を持つ幸地順係長

62歳とは思えない若々しい切れのあるダンスと歌声で幅広い年齢層を魅了する歌手の郷ひろみさん。2016年から嘉手納町の観光大使を務める。郷さんのサイン入り色紙と、新作が出るたびに本人から届くDVDが町役場のお宝。毎月「5」の付く日には、ロビーにあるモニターでDVDを上映する。

郷さんが親しくしている町出身の音楽業界関係者との縁が観光大使就任につながった。嘉手納町が音楽による町おこしに取り組んでいるという話に郷さんが共感し、町にふるさと納税もしたという。

成人式などのほか、2年前に嘉手納高校が甲子園に出場した時にも郷さんからビデオレターが届き、町民は元気をもらった。

當山宏町長は「嘉手納というと、米軍基地の町というイメージが強いと思うが、イメージを払拭(ふっしょく)し、音楽と伝統芸能をアピールしたい」と意気込む。

毎年、町内で開催する「うたの日コンサート」のほか、今年から「かでなGOGOフェスティバル」と郷さんの名前にちなんだ音楽イベントも始めた。「人間的にも素晴らしい方。町民としても誇らしく思う」と當山町長は話し、ビッグアーティストの応援を追い風に、地域の活性化を図る。



息づく「いちゃりばちょーでー」

沖縄にはあらゆる美術家、芸術家がいる。私たちが出身地の地元を愛するように、美術家たちも地元への愛情が深い。それが役場などへの作品寄贈につながっている。横のつながりが強い沖縄の人間関係の影響もあるようだ。ひょんなことから親交を深めた縁が、施設への作品提供などにつながった例もあった。

お宝の背景には、沖縄ならではの郷土愛と、いちゃりばちょーでー(出会えば皆きょうだい)の精神が息づいていた。


(2018年7月29日 琉球新報掲載)



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