実にディープな沖縄・塩屋の「ウンガミ(海神祭)」  昔そのままの祭祀を分かりやすく解説

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旧盆明けの初亥(い)の日、塩屋湾沿岸の集落で連綿と継がれているウンガミ。海の神のウンケー(お迎え)祈願から西の浜でのニライカナイへの豊穣(ほうじょう)願いまで、昔そのままの祭祀(さいし)が残る塩屋。組踊「花売りの縁」ゆかりの地でもある内海の美しい集落を訪ねました。




大宜味村「塩屋」のウンガミ

今年は9月4日「ウグヮンマール(御願年)」

 


カミンチュたちのシナバのガジュマル「パーシウムイ」唱え   2015年9月4日 写真提供 塩屋区事務所

塩屋湾のウンガミは、9月4日にウグヮンマール(御願年)と「ウドゥイマール(踊り年)」が隔年で行われ、今年は祈願や供え物が多いウグヮンマール(御願年)に当たります。「四カ(シカ)」といわれたウンガミは現在、田港・屋古・塩屋・白浜・江洲・大保・押川の7カ字共同で行われています。

ウンガミの朝、ノロによる田港のウフェー屋(ムラ起こしの神)からノロ殿内、アサギで神事を終えると、屋古集落での神舞、ノロの祈願に移ります。屋古の祭祀を終えたノロら、カミンチュたちはいよいよ陸路と海路(御願バーリー)で対岸の塩屋のシナバ(青年浜)へ向かいます。シナバでは女性たちが腰まで海に漬かり太鼓をたたいて迎えます。

シナバで合流する陸路とのカミンチュ行列に人々が腰を低くして手を合わせる中、行列は神道を通りナガリ(兼久浜)へ進みます。ニレーに向かい豊作と豊漁を祈願し、シマンホーといわれる男性のカミンチュがイルカを捕るしぐさをして、ナガリの儀礼を終えます。

その後、カミンチュたちはシナバのガジュマルの枝につるされた小太鼓をたたきながら「ウムイ」を唱え、一日目の行事を終えます。ウグヮンマール二日目、「ヤーサグイ」というカミンチュによる家々の不浄払いと健康祈願でウンガミが幕を閉じます。


2015年9月4日 写真提供 塩屋区事務所

御願バーリー船は塩屋、田港、屋古の6艘があり、初めに若手20人ほどが乗る「フギバン」、ベテラン40人ほどが乗る「ウフバーリー」が行われる。それぞれハーリー神が乗る。対岸の屋古集落から出発した御願バーリーを女性たちがシナバ(青年浜)で腰まで海に漬かり太鼓をたたいて迎える。

 

マップを見ながら歩いてみよう

塩屋湾のウンガミ(海神祭)集結の地

 


今回の案内人、塩屋区長の知念章さん

国道58号大宜味村を北へ、塩屋大橋を渡った塩屋湾口の突き出した砂州が塩屋集落です。集落を東からの涼風が吹き渡って、盛夏の暑さを冷ましてくれているよう。さっそく、案内人をお願いした知念章区長(67)と集落の背後の「ナハヤマ」方面へ歩き出しました。

ナハヤマの麓には、戦後もしばらく区民の水源であった「 1 ウッカーガー」があり、「終戦直後、区民は北側にあるムラガーと清水のおいしさを飲み比べて話題にしたそうです」と、知念さん。集落の路地を東側へ抜けると、ウンガミの御願バーリーを迎える「 2 シナバ(青年浜)」をはじめ、ウンガミにまつわる拝所が立ち並んでいます。



取材・文 伊芸久子 \マップイラスト 時川真一


大川井泉ウッカーガー

 1 大川井泉ウッカーガー
集落の東側の大川を源泉に、石を積み上げた造りのムラガー。正月の若水、産湯、日頃の飲料水に利用され、戦後もしばらくは簡易水道の取水地であった。旧暦9月9日カー拝みの拝所


シナバ(青年浜)

 2 シナバ(青年浜)
塩屋の東側の砂浜。ウンガミで対岸の屋古集落から出発した御願バーリーのゴール地



ウフチダキ(大地嶽)

 3  ウフチダキ(大地嶽)
ハーリー神(竜宮神)を祀った祠(ほこら)。ウンガミには、ハーリーの乗組員は乗船前に安全祈願をして、出発地点の屋古集落へ向かう



ニガミ

 4  ニガミ
塩屋の根神(ムラ草分けの家の姉妹)を祀った祠。正月二日の初起こしをはじめ、区の年中行事を起こす拝所



アサギ

 5  アサギ
カミンチュがムラの神を招き祭祀をつかさどる建物。 ウンガミのウドゥイマールにはアサギマー(広場)で豊年踊りが行われ、カミンチュはアサギの中で見守る。



サンシル(森川の子)ムイカワ ヌ シー

 6  サンシル(森川の子)ムイカワ ヌ シー
製塩業の始祖を祀った祠。子(シー)は士族の意




ハーミンゾウ(神門)で沖縄八景望む

 


集落のほぼ中央にたどり着くと、「沖縄八景の一つ、塩屋大橋や塩屋湾の眺めがいいですよ」と、知念さんが案内したのは小高い丘の「 7 ハーミンゾウ(神門)」。ちなみに、塩屋の方言は「カ」を「ハ」に転換するため、ハーミ(カーミ)ソゾウだと分かります。

91段の階段を上りきると目の前に、旅の行き来に安全を祈願する「ビジン神」を祀(まつ)った祠(ほこら)、その奥には組踊「 8 花売りの縁の歌碑」でムイカーヌシー(森川の子)が塩屋を詠んだ琉歌が刻まれていました。「宵もあかつきも なれしおもかげの 立たぬ日や無いさめ 塩屋のけむり」




ハーミンゾウ(神門)

 7 ハーミンゾウ(神門)
木々に覆われた小高い丘。主な拝所や旧家、墓地などはハーミンゾウを中心にして分布する。階段を上りきった場所に旅立ちの安全を祈願する「ビジン神」を祀っている



花売りの縁の歌碑

 8 花売りの縁の歌碑
組踊「花売りの縁」は夫婦、親子の深い情愛を描いた世話物の名作。あらすじは、首里士族のムイカーヌシーが妻子を置いて大宜味で塩炊きや花売りに身をやつすが、12年後に夫を探す旅に出た妻子と塩屋で再会を果たし首里へ戻る。劇中で塩屋の塩炊きが琉歌で詠まれている。塩屋の内海は沖縄八景の一つで、「沖縄観光名所塩屋湾の碑」もある



 9  えんどうの花歌碑
「えんどうの花」は1924年、塩屋尋常小学校に在職当時の金城栄治が作詞したといわれる。作曲した宮良長包は多くの名曲を残している。2004年旧公民館跡地に歌碑を建立


えんどうの花歌碑


 10  ナガリ(兼久浜)ハニクバマ
塩屋の西側に連なる浜。ウンガミの終わりに、ニレー(西の海)の海に豊作豊漁を祈願する


ナガリ(兼久浜)ハニ ク バマ


(2018年8月16日 週刊レキオ掲載)



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