中高生による動画アプリの「顔出し投稿」 特定されないよう一層の警戒を! モバプリの知っ得![69]


この記事を書いた人 稲嶺 盛裕

中高生向けの動画アプリがとても盛り上がっています。

有名どころだと「YouTube」。ただし、YouTubeは見ているだけで動画を投稿する中高生は多くはないでしょう。

一方、最近急成長を見せているのが「TikTok」。数秒〜数十秒の短い動画を、中高生を中心としたユーザーが手軽に投稿でき、見て楽しむことができるアプリです。
そして同じく急成長中の動画配信アプリ「17 Live」、投げ銭機能があるため、ファンを作ってお金を稼ぐことも可能です。

こうしたアプリでは中高生が顔を出して喋り、時には制服を着けた状態で動画を投稿しています。
便利で楽しい一方、一歩間違えると個人や学校が特定されトラブルになる事も考えられます。

これまでにもSNSを使う際に「個人が特定されないように気をつけよう」と言われてきましたが、動画では個人を特定できる情報の量がケタ違い。

そのため、動画アプリに投稿・配信する場合はかなりの配慮が必要です。

急成長をとげる「参加型」動画コンテンツ

イラスト・小谷茶(こたにてぃー)

TikTokは中国発の短編動画投稿アプリで、2018年に入り急成長を遂げています。
誰でも簡単に15秒までの動画を投稿することができます。

動画の投稿はTwitterやInstagramなどの既存SNSでも可能でしたが、TikTokの人気の秘訣はとにかく動画を視聴しやすい事です。アプリを起動すると話題の動画がすぐに再生され、15秒でテンポの良い動画を次々と見ることができます。
まだ使った事ない方は、トレンドを知るためにもアプリを一度取り込んで、動画を見ることをお勧めします。5分くらいで雰囲気がつかめると思います。

TikTokと並んで急成長を遂げているのは、台湾の会社が運営をする「17 Live」です。
17 Liveでは動画を生配信することができ、見に来た視聴者と交流をする事ができます。
このアプリの最大の特徴は、視聴者が配信者へ「投げ銭」がわりのアイテムをプレゼントできると言うこと。トップ配信者になると、毎日数時間の生配信を行い、月間数百万円の売り上げに到達することもあります。

お金が絡むアプリのためルールは厳しくなっており、過度な露出の服装での配信や、飲酒・喫煙をしながらの配信もNG。ルールを破るとアカウントが凍結される仕組みです。

スマートフォンが登場し始めた10年ほど前は、動画コンテンツを中高生が作ることはハードルがとにかく高かったのですが、ここ最近は「参加型」の動画コンテンツの成長が著しく、その中心に中高生がいると言っても過言ではない時代です。

動画配信時代により気をつけること

保護者からすると「動画配信をやって欲しくない」「使わせたくない」とした気持ちになるかもしれません。
しかし、一時的に”臭いものに蓋”をしても、適切な対処方法が分からなければ、後々使い出した時にトラブルに発展する恐れがあります。

そのため、動画コンテンツで発信する「リスク」の部分を理解してもらった方がいいでしょう。

文章や写真が中心の既存SNSとは違い、動画コンテンツでは「声」「表情」などがしっかりと伝わるため、配信者と視聴者の間との距離が近くなります。

その距離の近さを生かし、ファンを作ってアイドルのような活動が自分で出来ることがメリットです。

実際TikTokも17 LIVEも、人気投稿者は男女共にルックスが整っていて、疑似恋愛を提供する、ある種アイドルのようなアプローチを取っている人がとても多く存在します。

こうした関係性は適度な距離感を保つことができれば双方幸せで長続きする一方、距離が近くなりすぎるとおかしなことになってしまいます。

アイドル業界では、アイドルの事を本気で好きになってしまい、他のファンに嫉妬をするような状態のことを「ガチ恋」と言います。
ガチ恋になったファンがストーキングを行い、アイドルが恐怖を覚えたり、実際に自宅におしかけたりするなどの被害にあった方も多く存在します。

大手芸能事務所のアイドルであれば、ストーキング・ガチ恋対応に慣れたスタッフや先輩方もいて、それなりに対処や相談もできるでしょう。おそらく、そうした体制でも恐怖心は相当なものだと思います。

当たり前ですが、動画コンテンツへ参加している中高生は、そうしたトラブルへの対策や対応に慣れていません。有名アイドルと比較すると、トラブルの件数自体は少ないでしょうが、トラブルが発生した時のダメージは計り知れないものになります。

こうしたトラブルを回避するためにも、動画を投稿する時に個人情報の取り扱いに今まで以上に気をつける必要があります。

名前・住所・電話番号をはじめ、学校名・バイト先・住んでいるエリア・生活リズムなども知られないように、注意した方がいいでしょう。

特に学校名やバイト先は画面に映り込んだ制服から知られたりしますし、住んでいるエリアは部屋の窓から見える景色で特定されたりします。

こうした個人情報はジグソーパズルのようなもので、一つだけではよく分からなくても、2つ3つと複数組み合わさることで、より鮮明になってきます。
動画系コンテンツはその情報の多さゆえに、情報のパズルがサクサクとつながり、より多くの個人情報が露呈されることにもつながります。

また自分が気をつけていても「お前の動画面白いね。明日教室で詳しく聞かせてね」などのコメントが友人によって書き込まれ、その友人の情報から通っている高校が発覚するパターンもあります。
トラブルを避けるためには、自分だけでなく、友人も含めて注意を払う必要があります。

大人が止めても、流行に敏感な若い世代はスイスイと新たな動画コンテンツに参加してしまいます。
だからこそ周りの大人がその危険性やリスクを理解し、教えてあげる必要があるでしょう。

 琉球新報が毎週日曜日に発行している小中学生新聞「りゅうPON!」8月26日付けでも同じテーマを子ども向けに書いています。

 親子でりゅうPON!と琉球新報style、2つ合わせて、ネット・スマホとの付き合い方を考えるきっかけになればうれしいです。

【プロフィル】

 モバイルプリンス / 島袋コウ 沖縄を中心に、ライター・講師・ラジオパーソナリティーとして活動中。特定メーカーにとらわれることなく、スマートフォンやデジタルガジェットを愛用する。親しみやすいキャラクターと分かりやすい説明で、幅広い世代へと情報を伝える。

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