イルカのトレーナーになってみた。→万物への愛に目覚めた。 「てみた。」48

  • 北部
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つるんとした流線型のフォルム。きゅいきゅいと鳴いて甘える愛らしさ。動物介在療法も行われている癒やし動物の代表格、イルカ。

誰しも一度は「じかに触れ合ってみたい」「一緒に泳いでみたい」と夢を見たことがあるはず。

皆さんの夢を背負い、むさ苦しい記者2人がイルカのトレーナーになってみた。





記者の依頼を快く受け入れてくれたのは本部町浜元の「もとぶ元気村」。バンドウイルカとハナゴンドウイルカの12頭を飼育しており、さまざまな体験プログラムを提供している。

指定された午前8時、早速、トレーナーの一日が始まった。まずはイルカの1日分のえさを用意する。鯖(さば)やサンマ、ほっけなど魚種ごとにグラム単位で細かく決まってる。


スタッフとともに餌となる魚をイルカごとに分けるつかざき記者

獣医師でイルカトレーナーの山本桂子さんは「魚によってカロリーが違う。12頭それぞれの年齢や体重、前日の体調を考えてカロリー計算している」と解説してくれた。

おなかをすかせたイルカたちのためにスピードが命の作業、のんびりした気質のつかざき記者は解凍した魚を消毒し、はかりで計測、イルカごとの給餌バケツに分けていく。多少もたつきながらもなんとか終わらせた。




トレーナーの皆さんがそれぞれイルカの体調チェックを進めていると、見習いトレーナーのさの記者とつかざき記者に調理室清掃の指令が出た。

魚を取り分けたバケツや包丁を一つ一つ、丁寧に洗う。シンクは毎回、排水溝の中まで磨く。「健康でいてほしい」。思いは一つ、全てを洗い終えた頃には、なぜか気持ちまですっきりしていた。



餌の準備で使用した道具をきれいに洗う(左から)さの記者とつかざき記者



水面から顔を出して、あいさつするイルカたちのかわいいこと。にやにやが止まらないさの記者に、トレーナーから「薬を入れてください」と指令が出た。


トレーナーから餌をもらうイルカ

薬? と戸惑っていると「ビタミン剤を体調に合わせて投与してます。薬だけだと吐き出すので魚のえらに隠してあげています」とすかさず山本さんの解説が入った。体調が悪いときは人に用いる薬を投与したり、経口補給ゼリーを食べさせたりもするのだとか。さすが同じ哺乳類と妙に感心したさの記者だった。

お待ちかねのごはんタイム。だが、トレーナーが餌だけを与えることはない。必ずイルカに何か指示を出して、成功すれば与える。トレーナーの指示に合わせてイルカは海面でくるっと回り、おなかを見せた。再び山本さんが解説する。「体温測定ですね。おしりから管を入れて計ります」。体温だけではなく全身を触って傷を負ってないか、息遣いが荒くないかなどもチェックする。治療が必要なときにスムーズに処置できるよう、人に協力することを覚えさせてもいる。

毎日のコミュニケーションとトレーニングはイルカが健康に生きるために欠かせない。山本さんによると、自然界では外敵から身を守る必要があるため常に脳を働かせる必要があるが、飼育下では必要はない。イルカに知的刺激を与えることで精神衛生を保っている。「高く飛んだり、輪投げしたりするのも、心身共に健康に生きるためにも必要なことなんですよ」と話してくれた。



清掃を終えた2人は、いよいよトレーニングを体験した。輪投げが苦手だったり、手のひらキスが苦手だったりイルカにも得手不得手があるそうで、イルカごとに重点課題が違う。ここも人間と同じ。

まずは手のひらキス。笛の合図に合わせてさっと手のひらを海に向けると、イルカが口をくっつける。海に入ったつかざき記者は山本さんのアドバイスに従い、手を後ろに組んで直立不動。


イルカも立ち泳ぎで海面から直立。なんだかこちらもドキドキしてきた。「ピッ」。笛の音が鳴ると海の中へ潜ったイルカ、再び海面に出てくるとつかざき記者の手のひらに「チュッ」。つかざき記者の顔は溶けそうなほどにでれでれだった。


イルカのトレーニングを体験するつかざき記者(左から2人目)とさの記者(同3人目)

続いて輪投げ。さの記者が色とりどりの輪をイルカに見せ、一斉に投げる。すっと潜ったイルカ。海面に散らばった輪を口を使って回収し、さの記者の元へ。「よ~しよしよしよし」。すべすべのイルカをこれでもかとなで回し、こちらもでれでれに。むさい2人はイチコロでほれてしまった。

最後はジャンプだ。山本さんのアドバイスを受けながら2人が手を大きく振る。シュッと海中深く潜ったイルカたち。次の瞬間には見事に天高く舞っていた。

山本さんによると、指示がうまくこなせたときは全力で褒める。話し掛け、よくやったとなでて成功を祝う。反対に失敗した時は何もしない。それだけで失敗を理解し、学習するのだそうだ。「かわいさに加えて知力も負けている気がする」。遠い目でつぶやき、うなずき合う2人だった。






仕事を頑張ったご褒美にとデートが許された。「イルカと一緒に泳ぎますか」との山本さんの問い掛けに首が取れそうなほどうなずいたつかざき記者。


イルカと触れ合うつかざき記者

つかざき記者がプールに入るとイルカはそっと近づいてきた。「振り落とされないか」。泳ぎに覚えはあったが緊張が走る。つかざき記者が背びれをつかむと「びゅっ」と泳ぎ始めた。

イルカはゆっくりと優しく泳ぎ、つかざき記者が振り落とされることはなかった。それでも、速い水流が肌に触れる。ほんの数メートル、数秒のデートだったが、一緒に海の中を駆けた。「気遣って泳いでくれているのだな」とイルカの知能の高さにまたも感心した。



もとぶ元気村



もとぶ元気村では、イルカと触れ合えるさまざまな体験プログラムがある。与那国馬やリクガメ、ヤギなども飼育している。皆さんも動物たちとのデートを楽しんでみてはいかがだろうか。

もとぶ元気村 ― 沖縄県国頭郡本部町浜元410。問い合わせは(電話)0980(51)7878。




(2018年10月14日 琉球新報掲載)



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