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春生まれの夏子の挑戦 100cmの視界から―あまはいくまはい―(47)


この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報社

「夏子だから、夏に生まれたんでしょう?」とよく聞かれるのですが、実は私、4月生まれです。

今月37歳になりました。

37年前、私は名護病院(現・県立北部病院)で生まれました。普通の赤ちゃんは生まれてしばらくすると、泣き疲れたり、おっぱいを飲んで満足して、スヤスヤ眠るそうなのですが、私は一晩中泣き続けたそうです。なかなか寝ないので、おかしいと思った医師が検査をすると、なんと右足も左足も折れていたのです。さらには、頭の骨もほとんど作られていませんでした。病名が分からず、医師は両親に「どれくらい命が持つか分からない。覚悟していてください」と伝えたのです。

いつまで生きられるかは分からないけど、沖縄の夏の太陽のように元気に生きてほしい、夏までは生きてほしい、そんな思いを込めて「夏子」と付けられました。春生まれなのに「夏子」の誕生秘話です。

母の72歳のとぅしびー祝いを、家族みんなでしました (本人提供)

病名が分からないまま入院して1カ月がたったころ、県外から沖縄に、骨の専門の医師が来ていると聞きつけ、受診しました。

そこで初めて私の障害が「骨形成不全症」だと分かったのです。命に別状はないということが分かり、1カ月間不安を抱えていた両親は安心したそうです。

成長はゆっくりで、オムツを替えるために親が足を持ち上げただけで骨折してしまう。でも、一丁前におしゃべりし、明るかった私。家族や親せきだけでなく、近所の人など、たくさんの人が褒めてくれ、私にとっては歩けないことが普通でした。県外に進学、海外留学し、いまは2人の子どもを育てています。

ちょうど1年前の36歳の誕生日に「37歳までに本を書きたい」と決意。

それが実り、5月25日に「ママは身長100cm」を出版します。今年の目標は、出版を記念して、サイン会やトークイベントを開き、1人でも多くの人に本を読んでもらうこと。子育てをはじめ、できないことが多い私ですが、助け合いながら、いろいろチャレンジしてきたコツをお伝えできると嬉しいです。

書店さんや、学校・福祉関係の方々、子育てに携わる方、お声を掛けていただけるとありがたいです。

4月24日に強制不妊救済法が成立しましたが、ひと昔前、障がい者は子どもを生み、育てるべきではないという偏見は根強くありました。サポートがあれば誰でも子育てができるし、どんな子どもも生まれながらに幸せです。助け合いの楽しさ、大切さがより広まって、いろいろな人が生きやすい毎日になりますように。

(次回は5月21日に掲載します)

伊是名夏子

いぜな・なつこ 1982年那覇市生まれ。コラムニスト。骨形成不全症のため車いすで生活しながら2人の子育てに奮闘中。現在は神奈川県在住。

 

(2019年4月30日 琉球新報掲載)