優しい彩りで暮らしに溶け込む イラストレーターMIREIの世界


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イラストを通して暮らしが豊かになれることを。1人のアーティスト、そして母親として、思いを形で表現しているイラストレーター・MIREI(ミレイ)として活動する金城美玲さん(45)。MIREIさんの鳥や花をモチーフにした可愛らしい絵は、見る人を優しい気持ちにさせてくれます。7月から始まった、自分らしく生きる女性を応援する会員制講座「step☆なりたい私へ」(主催・琉球新報社)のシンボルマークも手掛けています。これまでのアーティストとしての道のり、子育てとの両立。1人の女性としての生き方を聞きました。

(聞き手・フリーライター・東江亜季子)

沖縄でのアート生活と子育て

鳥や花、魚など自然の生き物たちを描いた”PEACEFUL GARDEN” MIREIさんの代表作品の一つ。

那覇市牧志にセレクトショップ「RENEMIA」を構え、これまでに制作したイラストカレンダー、ポストカードなどを、沖縄の作家さんの作品とともに展示販売するMIREIさん。9歳、7歳、2歳の3人の子を育てながらアーティストとして活動しています。お店の名前は、子どもたちの名前が由来。アートの着想も、子育てをする日々の生活からです。

代表的な作品である空想の花々は、さまざまな色、形をし、子どもが生まれてから初めて描くようになった作品。「子どもの日々の成長に感動して、心の中で花が開いていく感じを描き始めた」と語ります。MIREIさんにとって子どもたちは刺激を与える大切な存在。絵本の読み聞かせをするときの子どもの自由な発想による即興や何気ない会話に学び、子どもが身に着ける服や生活で使う物に「こういうものがあったらいいな」と暮らしの中からアイデアが溜まっていきます。

「子どもが生まれる前はよく子どもの絵を描いていた」とMIREIさん。女の子のイラストが多いのは洋服をアレンジする楽しみもあったからだそう。

そんなMIREIさんも、結婚して子どもが生まれる以前は展示会を頻繁に開催することに奔走していたのが、子どもを出産してからは描きたくても描けない、展示会もひらけない。「思い通りにいかない」生活に一変し、焦ったといいます。

しかし「子育ては大切。焦らずに」と変化を受け入れ、子ども達ペースに合わせながら少しずつ進むことを選びました。現在は、子どもが寝ている時や午前保育の間、どうしても時間を作りたい時は親のサポートも得ながらイラストレーターの仕事を続けています。

バレエから絵の道へ

MIREIさんがイラストや絵を描く道を選んだのは大学受験の時。「周りが受験に向かって大学で勉強したいことを見つける中、私はそういうのがない」と考えていた高校3年生の時、子どもの頃からよく絵を描くのを見ていた母親が「芸大に進んでみたら?」とMIREIさんに言いました。それまでずっとバレエを習っており「好きなことはバレエ。絵を描くのも好きで、時間がある時に描く」という子どもだったのが、絵が中心の生活に。
沖縄県立芸術大学のデザイン科を志望校に決め、予備校に通い始めた。しかし、いざデッサンの練習をすると「デッサンがうまく描けなくて。もっと上手になりたい」。
予備校には、絵の上手い人たちがたくさんいた。周りと比べた時の悔しい気持ちが原動力になったと言います。絵の世界にどんどん夢中になり、浪人生活を経て、県立芸大に入学しました。

キャリアを築く鍵は大学生時代、手に取ったファッション誌。「挿絵として入っているイラストにひかれ、イラストレーターっていう仕事があるんだ」と知り、イラストレーターになりたいと決めました。

“自分の色”がわからなくなった東京生活

大学を卒業した後、「いつかはイラストレーターに」と思いを胸に秘めながらも「デザインの仕事の全体の流れを知ろう」と、東京でデザイン事務所に就職。仕事の傍ら、絵も描き続けました。しかし、東京では自らの作品を「『自分の絵です』と売り込みできなかった」という。

緑や花など自然が身近な沖縄と違い、ビルがひしめく東京の街。さまざまなアーティストの作品を目にする機会にも恵まれますが、MIREIさんは「自分の絵を見失った。『こう描いたらいいかな』『この雑誌にはこうした方が合うかな』と考えている自分がいて、周りを意識しすぎてビビッドな色を自然と使えなくなっていた」と振り返ります。

デザインの仕事を3年で区切りをつけ、独立するなら自然体で描ける沖縄でと決めていた。沖縄に帰ってきて、28歳で独立。イラストレーターとして本格的に歩み始めました。

現在は沖縄も商業施設など開発が進み、インターネットの発展も合間って情報が増えてきたと感じますが、沖縄の光の中、身近にある自然や家族の時間が創作の源に。「沖縄の暮らしの中で枠にとらわれず自由に創作ができれば」と活動を続けています。

「step☆」に込めた思い

MIREIさんが今年手掛けた作品の一つが「step☆~なりたい私へ」のシンボルマーク。stepの文字の横にシンボルとなる星が輝いています。花のイラストは1枚1枚異なる色の花びらに囲まれ、中心にも星が象られています。「カラフル」「輝く」などの講座の企画に込められた思いを表現し「受講する人たちにとって輝くきっかけになり、それぞれの想いが花開いたらいいなという願いを込めた」と語ります。

第1回のstep☆講座に参加し「育児や仕事で忙しくしている日々に、時々は自分の時間をつくりインプットをする時間って大事」と改めて感じたMIREIさん。独身の頃、3カ月フランスへ渡り、芸術作品を見た日々は「栄養をたっぷり得た」貴重な期間だったそう。

女性として輝く−。
育児をしながら、アーティスト活動をするMIREIさんも、『なりたい私』を模索して、実践している一人です。

Tシャツ展を開催中

MIREIさんの描いた動物や子どもの絵などから好きなデザインと、好きな色のTシャツとサイズを選んでプリントできるTシャツ展を開催中。

◇期間:8月24日(土)まで 午後1〜6時
◇場所:RENEMIA(那覇市牧志2-7-15)(マップはこちら

同展は「シンプルでかわいいTシャツを子どもたちに着せたくて」と始めた企画。「子どもだけじゃなく、大人の人がオーダーしていくことも多い」という毎年恒例の人気イベントに。

会員制講座【step☆なりたい私へ】の詳細・申し込みはこちら → https://ryukyushimpo.jp/style/article/step2019.html

【筆者プロフィール】
東江亜季子あがりえ・あきこ)
琉球新報社で記者、教育事業を経て、現在はフリーライターとして取材・執筆するほか、個人で教育講座の講師・コーディネーター等を行う。モットーは「多様性ある自由な社会でつくり、自分で考え、発言できる人を育てること」。クリエイティブ会社に勤めながら、アメリカ人のパートナーとダンススクール”FREE∞SPIRIT DANCE ACADEMY"や英語スクール”Prince先生の English道場”で子どもたちの育成もサポート中。
著書に「私のポジション 『沖縄×アメリカ』ルーツを生きる」(東江亜季子著、琉球新報社編)。
リンク→https://store.ryukyushimpo.jp/product_list/product/3000400075?d=3000400075-0000
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