先生たち、手本になれていますか?【レインボーハート】


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8月19日、同性パートナーのいる東京都立学校教諭らが、夫婦に適用される慶弔金や休暇制度等の福利厚生が同性パートナーに適用されないのは不当な差別だとして、都人事委員会に改善を求める措置要求を提出したと報じられました。夫婦であれば当然適用される福利厚生制度も、私たち同性愛者が、その恩恵を享受することはまだまだ容易なことではありません。

これまで「LGBT・性の多様性」学校講演会でたくさんの学校を訪問しました。悩みの相談は、子どもたちだけでなくLGBT当事者の先生から受けることも少なからずありました。

「勤務校に悩んでいる生徒がいるが、職場でカミングアウトしていないので、どう励ませばいいか悩んでいる」という先生もいらっしゃいました。

残念ながら社会にはLGBTに対する差別や偏見が存在するため、カミングアウトによって学校で肩身が狭くなったり、仕事に悪影響が出たりするのではないかと心配されるのは当然だと思います。特に公立学校の先生は他の仕事とは異なる責任があり、慎重にならざるを得ないのだろうと想像します。

教育者として正直な気持ちで子どもたちに接したいという思いと、カミングアウトが困難な現実。悩まれる先生は少なくないのではないでしょうか。

沖縄には約2万人の先生が働いていらっしゃるそうです。LGBTは人口の約5%と言われますので、約1000名の当事者の先生がいると推計されます。

学校講演会が当事者の先生の応援にもなればと思っています

今回、都人事委員会に提出された要求は、沖縄にも当てはまることです。沖縄でも先生方の福利厚生制度は夫婦には適用されても同性パートナーには適用されていないと聞きます。

近年、LGBTの子どもたちが学校に通いやすくなる環境作りが次第に広がってきました。一方で、声を上げたくても上げられない、LGBT当事者の先生方も働きやすい環境を作る取り組みは、まだまだこれからのように思います。簡単に解決できるものではないとは思いますが、社会全体として取り組むべき大切な課題だと感じます。

学校では子どもたちに差別をせず、多様な人を大切にすることを教えています。その同じ学校で、性の違いに関わらず、先生たちが働きやすい環境を作ることは、子どもたちへの大切な「お手本」となるのではないでしょうか。

「先生たちの職場も、こんなふうに多様性を大切にしているんだよ」と実例を持って子どもたちに示すことができる、そんな沖縄の教育現場であってほしいと心から願います。

(2019年9月17日 琉球新報掲載)

 竹内清文(たけうち・きよふみ) 岡山県津山市出身、沖縄県在住。レインボーハートプロジェクトokinawa代表。LGBTをテーマに学校講演会を数多く行う。