予定より2カ月遅れて行われた、息子の小学校入学式。私立の小学校なので、電車とバスを乗り継いで登校します。移動中の新型コロナウイルスへの感染が気になり、災害時のことも考えると、近くの公立小学校にするべきだったのかな、といまさら思ったりする。問題にぶつかると、何が正解かが分からなくなり、さらに情報を集めて、考えながらベターな選択をするしかありません。この決めるという作業は、とても難しいですね。
入学式で体育館に集まったのは、例年の半分以下の人数だったのですが、それでも200人近く。3カ月ぶりの大人数の場で、マスクも着用しないといけなく、式が始まる前に私は疲れてしまいました。でも先生方の優しい声掛けや、在校生が新入生の手を引く姿、マスクで顔が隠れ、表情はよく分からないけれど楽しそうな子どもたちの歌声で、私も少し元気が出てきました。
教室に移動して、担任の先生の話を聞いていると、絶え間ない鳥のさえずりが聞こえてきました。気持ちいいなと思っていた時、この学校を選んだ最大の理由を思い出したのです。豊かな自然と、その山に作られたスロープのことを。障がいがあると、自然の中での遊びが制限されがちですが、スロープまで付けてくれるなんて。いろいろな子どもを大事にするこの学校なら、お互いの違いを受け入れ、壁にぶつかっても、試行錯誤しながら乗り越える力が付くと思ったのです。
また、高学年からは沖縄の文化や歴史を学び、6年生の修学旅行も沖縄。職員室の入り口にはシーサーが置かれ、教室には琉球新報の切り抜き記事や、沖縄そばの作り方が貼られています。県外に住みながら沖縄について学べることも、私にとっては魅力的でした。
この自粛期間、子どもにとっては大人よりも長く感じる3カ月だったことでしょう。たくさんの制限と不安の中、賢く、協力的に乗り切ってくれたすべての子どもに感謝をしたいです。奪ったものもたくさんあったと思うし、これからも新しい生活様式の中、試行錯誤が繰り返され、さらに無理を強いることもあるかもしれません。だからこそ大人たちは、若い人を大切にできる、新しい社会を作っていきましょう。若い人こそが未来を築き、長い平和につながるからです。そして違いを認め合い、いろいろな生き方を尊重したいですね。経験したことのない未知の社会を作るのは大きなチャレンジです。でも変えていく今だからこそ、若い人を大切にしながら、自分の理想を求めつつ、相手の生き方も尊重しませんか?
(次回は6月23日)
伊是名夏子
いぜな・なつこ 1982年那覇市生まれ。コラムニスト。骨形成不全症のため車いすで生活しながら2人の子育てに奮闘中。現在は神奈川県在住。
(2020年6月9日 琉球新報掲載)