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坂本龍一氏と沖縄音楽の縁!?【島ネタCHOSA班】


この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報社

今年3月、著名音楽家の坂本龍一氏が亡くなりました。沖縄音楽の要素を取り入れた過去作品があるそうですが、紹介してもらえませんか。

(北谷町 教授に感謝)

日本が誇る音楽家で米アカデミー作曲賞を受賞するなど、国際的な知名度も高い坂本龍一さん。新基地建設や環境保全ほか沖縄が抱える問題にも関心を寄せ、世界に発信していたそうです。音楽面を調べるべく調査員は、開業70年を超える情報豊富な高良レコード店へ。取締役の高良雅弘さんによると「1980年代に発表した『ネオ・ジオ』と『ビューティ』というアルバムに沖縄民謡を取り入れています。録音に参加した歌手の古謝美佐子さん・玉城一美さん・我如古より子さんは、全国的に注目されるようになりました」とのこと。さらに「レキオが取材していたはずですよ」というヒントもいただき、バックナンバーを探してみると…ありました! 1987年7月10日号の表紙を飾っています。記事に登場した我如古さん、コーディネート役を務めた國場幸順さんを訪ねました。

坂本龍一さんの思い出を語る、國場幸順さん(右)と我如古より子さん

曲を収録しツアーに同行

「娘ジントーヨー」他ヒット曲を持つ我如古さん、そして県内音楽界で活躍し「六人組」という幻のバンドを結成したことでも知られる國場さんが会うのは何と36年ぶり。「ネオ・ジオ」制作以来の再会になりました。

坂本龍一「NEO GEO(ネオ・ジオ)」/1987年 高良レコード店(那覇市牧志)他各ショップ・通販サイトで発売中

「このアルバムは坂本さんの共同制作者としてアメリカの著名プロデューサー、ビル・ラズウェルを迎え沖縄民謡をミックスすることになりました。ラズウェルと面識があった沖縄出身の僕は、ボーカルとして参加する女性民謡歌手3人を探してほしいと頼まれたんです」と語る國場さん。知人だった古謝美佐子さんと玉城一美さんに声を掛け、古謝さんの紹介で我如古さんが加入。「子どもが小さくて悩みましたが、レコーディングだけならいいかと思い参加しました。でもコンサート出演も決まったんですよ」と我如古さん。「88年にネオ・ジオ アメリカツアー、90年にはビューティワールドツアーに参加しました。ワールドツアーは3週間で約20カ国を回り、会場とホテルの移動続きでハードだったことが思い出です」と笑顔で振り返ります。

また発表当時、坂本さんが手掛けるワールドミュージック作品として大きな話題を呼んだ「ネオ・ジオ」ですが、國場さんには苦労話が。「収録した『ちんぬくじゅうしい』を発表するために作者を探す必要がありました。でも作者不明で調べても判明しない。困っていたところ、僕のファンの方からの情報で作者が分かったんですよ」と、貴重なエピソードを教えてくれました。奇跡的な巡り合わせで沖縄音楽が世界に羽ばたいたのですね。

沖縄メロディーが世界へ

坂本さんと関わった2人は現在も国際派として活躍。國場さんが93年に発表したアルバム「水中庭園」の30周年記念LPレコードが、ボーナス曲を追加収録し今月、欧州・北米・日本でリリースされます。またこの日は我如古さんが舞台に立つ「民謡ステージ歌姫」で話を伺いましたが、県内外のお客さまはもちろん外国人観光客も来店。音楽は国境を超えるシーンを目の当たりにしました。

沖縄民謡がたっぷり楽しめる、我如古さんのステージ

坂本さんの影響を大きく受けたと話す我如古さん。「沖縄民謡に三線の音色はあって当然だと思っていたので、三線を使わない坂本さんに疑問を投げかけたことがあったんです。でも演奏やアレンジで楽曲はいろいろな表情を持ち、音楽には縛りがないと教わりました」。固定観念が消えるきっかけになったそうです。

國場さんと我如古さんの話から、坂本龍一さんと沖縄音楽の縁を知った調査員。出番が来た我如古さんはステージに上がり、『ちんぬくじゅうしい』を披露。世界に広がった思い出の曲を生で聞き、大感動で調査を終えました。


◆我如古より子さんの店

〈民謡ステージ歌姫〉

那覇市牧志1-2-31-B1F

TEL 098-863-2425

営業時間:18時~24時(ライブチャージ1100円・税込み)

定休日=なし

(2023年8月10日 週刊レキオ掲載)