伝統の音を支える太鼓職人 新崎太鼓三味線店 屋良祐輔さん


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エイサー太鼓の音色響け
 

大小さまざまな太鼓が並ぶ店内に立つ屋良祐輔さん。初代で祖父の新崎松雄さんが製作した太鼓の修理を手掛けたことも=沖縄市泡瀬の「新崎太鼓三味線店」 写真・村山望

旧盆が近づき、県内各地でエイサーの練習に励む太鼓や三線の音が聞こえてくる季節。多くの人がその響きを心待ちにしている。そんなエイサーや古典芸能に欠かせない太鼓と三線を作り続けるのが新崎太鼓三味線店。県内外からの製作や修理の依頼に対応している。3代目の屋良祐輔さんはネット販売やオリジナル商品「めで太鼓」の開発にも乗り出し、太鼓の魅力を発信している。

沖縄市泡瀬にある新崎太鼓三味線店では一年で一番忙しい時期を迎えている。太鼓と三線の製作や修理などを請け負っている同店では、代表で3代目の屋良祐輔さん(37)と、初代で祖父の新崎松雄さん(85)が沖縄の伝統の楽器作りを続けている。

6~10月の繁忙期は県内外から修理や製作の注文が増える。青年会や県人会、サークル、国内外で活躍する太鼓集団、運動会でエイサーを披露する学校、時には同業者からの依頼にも対応している。

工房で三線の弦を巻く「カラクイ(糸巻き)」を製作中の新崎松雄さん。闘牛の骨を用いたオリジナルのもの

創業は1975年。大工だった新崎さんが、その技術を生かし太鼓と三線を作り始めた。優秀な技術・技法を持つ「県工芸士」にも認定されている新崎さんの三線の型を好む人は多い。主に太鼓を製作・修理をするのは3代目で孫の屋良さんだ。

太鼓の製作・修理を行う店は県内で数軒しかなく、革作りまでこなすのは珍しいという。太鼓製作を始めて10年になる屋良さん。「作っているのは基本的にパーランクー、締太鼓、大太鼓の3種類」と話す。太鼓の作り方は、初代や現在は別の仕事に就いている2代目の叔父・新崎律雄さんから学んだ。

牛の皮から太鼓作り

胴作りと革張りが太鼓の工程だが、重要なのは音を左右する革張りだ。「革が切れるか切れないかという、ぎりぎりのところまで思い切り引っ張らないと、たたいたらすぐにたるんでしまう」。胴に鋲(びょう)を打ち込んで革を固定し、余分な革を切ると完成する。

天日干しされる牛の皮(提供写真)
エイサー用の大太鼓の胴は、木材を張り合わせて接着した後、旋盤機や紙やすりなどで形を整える。木材は軽くて丈夫なものを使用(提供写真)

2年前から革作りにも取り組み始めた屋良さん。太鼓の胴に張る革は、牛皮をなめし、太鼓の革に仕上げていく。皮やなめし方でも音は変わるという。「いろいろな先輩たちからなめし方を教わった。牛の皮をなめす作業から全部やるようになっているので、自分が好きな好みの音が作れるようになった」と語る。

屋良さんが職人の道に入ったのは2013年。同店がネット販売に乗り出すことになり、ネットの知識があった屋良さんが同店で働き始めた。もの作りが好きだったこともあり「結局楽器を触る方が好きになって、すぐに製作するようになった」。7年前からは代表を任されるように。「(太鼓の技術は)抜群です。三線もやがてやりますよ」と祖父の新崎さんも太鼓判を押す。

次の世代へつなげたい

ネット以外にも、新しい試みを取り入れた。7年前には屋良さんが考案した「めで太鼓」の製作・販売を開始。太鼓の胴に写真などを印刷した生地を張った飾り太鼓で、商標登録も認可された。100日記念や100歳記念などの記念品や贈り物として展開しているという。

屋良さんが開発した「めで太鼓」

「壊れた太鼓の修理をして、お客さんがそれを喜んでくれるのがありがたい」という屋良さん。社会科見学に来た小学生が後日メッセージを送ってくれたり、近隣の小学生や保育園園児が通りがかりに「頑張ってください」と声を掛けてくれたりすることも励みになる。

「僕が一番若くてその上が50代。どうにか下をつくっていかないと、沖縄で革を張れる人や太鼓を作れる人がいなくなってしまう」と技術の継承にも思いをはせる。

エイサーの響きを聞くのは毎年の楽しみだ。職人によって釘の打ち方や革の質などが違うといい「自分の太鼓は見ればすぐ分かる」とほほ笑む。引き継がれた伝統の音がまもなく街に響きわたる。

(坂本永通子)


新崎太鼓三味線店

沖縄市泡瀬6-4-28
TEL 098-937-9400

営業時間10:00~18:00
定休日 日曜日

https://www.arasakitaico.jp/

(2023年8月17日付 週刊レキオ掲載)