読谷村に「沖縄草玩具館」という個人で運営しているクラフト館があると聞きました。草で編んだ玩具などがたくさん展示してあり、作り方も教えてくれるそうです。ぜひ調べてください。
(浦添市 ガング・コング)
以前草玩具作りを楽しんだことがある調査員としては、マニアックなトピックに興味津々です。さっそく調査を開始しましょう!
もらうのは時間だけ
読谷村比謝矼にある沖縄草玩具館に着くと、館長の新崎宏さんが迎えてくれました。一見普通の一軒家ですが、中に入ると玄関から草玩具であふれかえっています。
置いてあるのは、アダンや麦わら、ソテツなどで作られた草玩具や装飾品など。新崎さん自身が製作したものの他、国内外から収集した作品が展示されています。ヘビやバッタ、カマキリ、ムカデ、旗頭、ススキのほうき、かんざし、麦わら帽に使用する麦わらを編んだ「麦稈真田(ばっかんさなだ)」などがあり、繊細に作られている玩具に見入ってしまいます。
「見て見て」と目を輝かせて玩具のことや、地域の風習などを解説してくれる新崎さん。草玩具愛がひしひしと伝わってきます。新崎さんは、世界中の草編みを勉強して技術を習得したそうです。県内各地に出向き特色ある沖縄の編み方を習ったり、中国や日本各地で作り手たちと交流を続けてきたりしました。
同館は2009年にオープン。高校の教師だった新崎さんが退職後に開館した私設のクラフト館で、リニューアルを重ねて今に至るそうです。ここは博物館ではないという新崎さん。「見て作って遊ぶ場所で、頂くのは時間だけ」と話します。遊ぶものに価値は付けたくないという思いから、来館者に対しては入館料、受講料、材料費はなしで運営しています。
作って遊ぶ体験も
新崎さんは作り方などを記録に残すため『手遊び 草編み玩具』(第1 巻~3巻)、同シリーズ別巻の『草ひも』を自費出版。第5回自費出版文化賞では、地域文化部門賞を受賞しました。現在は第4巻を執筆中で「生活の知恵である『ジンブン』を沖縄から他県にどんどん紹介したい」と願います。
新崎さんは普及活動にも積極的に取り組んでいます。公民館や老人福祉センターなどで、さまざまな世代の人たちに草玩具の楽しさを「全力投球」で教えています。東日本大震災で被災した岩手県内の小学校を訪れ、ワークショップを開催したことも。草編み玩具を作ってゲーム遊びを行い「大フィーバー」だったそうです。
一通り展示を見て回った後は、作って遊ぶ時間です。「草の遊びは季節を待つ喜びがある」という新崎さん。使う材料となる県産の植物は季節により変わります。今回はアダン葉でアダン笛を作って楽しんだり、カジマヤー(風車)作りをして回せるようにする仕組みを学んだり、魚を空で泳がしてみたり、時間の許す限り遊んだ調査員。沖縄の伝統の玩具作りを通して昔の風習にも触れることができました。皆さんも、たっぷり時間をつくって草編み玩具の世界を体感しに行ってみてはいかがでしょう。
沖縄草玩具館
読谷村比謝矼78
TEL 090‐9788‐1831
入館無料
※来館の際は要予約
(2023年8月31日 週刊レキオ掲載)